老化細胞の分泌する新規老化誘導因子の機能解析
【研究キーワード】
老化 / 寿命 / 代謝 / がん化 / シグナル伝達
【研究成果の概要】
我々は、老化に関与する可能性がある分泌タンパク質としてNTを見出したので、NTが老化・代謝・がん化に与える影響をさらに具体的に明らかにすることを目的として研究を進めた。
本年度までの研究成果から、NTはヒト線維芽細胞IMR90細胞の老化を惹起する機能を有することを示唆する結果が得られている。本年度は、まずNT欠損マウス胎児より調製したMEFを用いた解析を行った。その結果、NT欠損マウス由来のMEFでは継代数の増加に伴う細胞老化が抑制されることを見出した。続いて、NT欠損マウス個体レベルでの解析を試みた。NT欠損マウスは通常飼育下では野生型と比べて体重に変化は無く、雌雄ともにインスリン感受性にも差は認められなかった。そこで、脂肪組織に対して生理的な条件下で老化を引き起こすために高脂肪食負荷を行い、インスリン感受性の変化を検討した。その結果、NT欠損雄マウスでは高脂肪食負荷時において、インスリン感受性が改善しており、そのことは血中Hb1Ac値の低下からも確認された。さらに、脂肪組織における老化シグナルの発現を確認したところ、NTM欠損マウスの脂肪組織ではIL-6などの老化関連遺伝子の発現減少が確認された。
そこで、NTの阻害剤は抗老化・糖尿病の治療薬になりうるという仮説の下、NTに対する中和抗体の作製を試みた。NTリコンビナントタンパク質もしくはNTM強制発現細胞をマウスに免疫したのちに、抗体産生ハイブリドーマを作成し、抗NTモノクローナル抗体を生産するクローンを選択した。得られたモノクローナル抗体をIMR90細胞に作用させたところ、Ras強制発現に伴う老化惹起を緩和する効果を有するクローンが見出された。したがって、我々はNTMに対する中和抗体の取得に成功したと考えられる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
鴨志田 祐己 | 東京大学 | 定量生命科学研究所 | 特任研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)