大面積プロットによる秩父地方山地帯天然林生態系の解明
【研究分野】林学
【研究キーワード】
秩父 / 山地帯天然林 / 生態系 / 大面積プロット / 樹種の分布様式 / 林内気象 / 鳥類 / 昆虫類 / 林冠ギャップ / 森林生態系 / 大面積ブロット / 観察塔 / フェノロジー / 個体群動態 / 林内微気象 / 動植物の相互作用 / 共生
【研究成果の概要】
種子トラップによる1994〜'96年の3年間のイヌブナ及びブナの落下堅果数の調査から、イヌブナとブナでは開花結実年が同調せず、イヌブナでは1995年が豊作年、ブナでは1996年が並作年であったことが明らかにされた(梶).大面積長期継続生態調査区5.0625haにおける 胸高直径5cm以上の毎木調査資料に基づいて、地形解析、森林の相観を特徴づける変景の算出と地形との相関、樹種の空間分布の解析ならびに各樹種の地形依存性の解析を行った.その結果、特定の樹木種群の分布は地形(水分条件)と密接な関係があることが明らかになった(大久保・梶).ブナとイヌブナを対象に、節足動物の種類及び個体密度が時間的、垂直的にどのように変化するかを調査した。それによって得られた知見は、1)節足動物の垂直分布パターンは分類群により大きく異なること、2)ブナ、イヌブナの間で植食性昆虫の密度が異なることである(宮下)。大面積プロット及びその周辺での鳥類の調査から、約70種の鳥類が記録され、その内37種が繁殖した。繁殖鳥類群集の多様度は、5.04(shannon関数)とかなり高い価を示した。これは、他の調査地のデータと比較した場合、葉層多様度や樹冠集中度で評価した植生構造の多様度の高さに比して、それほど高い価ではなかった(石田).イヌブナとブナ天然林の観測塔における、気温と日射量の垂直的観測から以下のことが明らかになった.1)林冠内と林冠外の日射量の相対値の日変化から、1995年と1996年の落葉はそれぞれ11月7日〜9日、11月2日〜6日に集中し、いずれも多量の降雨によるものであることが推定された。1996年の開葉日は5月17日頃であることが推定された.2)気温の日較差は林冠上部で最も大きく、地表に近いほど小さい傾向にあった。また、着葉期と落葉期ににおける月ごとの気温の平均日較差の比較から、森林の気候緩和機能は着葉期に発揮されていることが分かった(蒲谷・芝野)。
【研究代表者】