西洋史におけるマイノリティ問題の性格と構造に関する研究
【研究分野】西洋史
【研究キーワード】
マイノリティ / ネイション / ネイション・ステイト / エスニシティ / 民族 / 言語 / 宗教
【研究成果の概要】
1.2年度にわたる研究において扱われたマイノリティ問題は、いくつかに区分できる。(1)特定地域に関連した問題:バスク問題、アルザス問題、ブルターニュ問題、アイルランド、スコットランド、ウエールズ問題、ラップ人問題、ユーゴスラヴィアのアルバニア人問題、ポーランドのウクライナ人問題:ルーマニアのハンガリー人問題、ハンガリーのスロヴァキア人問題、ラップ人問題など。(2)特定地域に関連しない問題:ユダヤ人問題、ジプシー問題、移民、ガスト・アルバイターなど。
2.そのようなマイノリティ問題の研究をとおして明らかになったことは、以下の点である。(1)「マイノリティ問題」なるものは、近代ヨーロッパの産物であり、特にフランス革命以後に鮮明になったということである。そこでの近代的国家統合の過程でこの問題が登場したといえる。(2)マイノリティ問題は、ほぼ19世紀のあいだに、宗教的マイノリティから、言語的へと、相互に関係しあいながら、展開してきているように見える。それは、人間の社会的自覚の進展に関連しているようである。今日からすると、すべてが複合体をなして見えるが、歴史的には一度解体して分析すべきである。(3)19世紀におけるこの展開過程は、同時に西ヨーロッパから東ヨーロッパへの「問題」の移行でもあった。そして、東ヨーロッパでは「問題」は重層的に重なって現れた。(4)1960年代からの西ヨーロッパでのマイノリティ問題の登場は、東ヨーロッパにおける問題をふたたび検討することをよぎなくし、そうすることによって全ヨーロッパ的規模において、ネイションやネイション・ステイトを基準にして発展を考える歴史観を反省させている。
【研究代表者】