完全無機ペロブスカイトナノ結晶蛍光体の光劣化と自己回復機能の探究
【研究キーワード】
蛍光体 / ナノ結晶 / 量子ドット / ペロブスカイト / 光劣化 / 自己回復 / 光活性化 / 表面リガンド / ハロゲン / ペロブスカイトナノ結晶 / 蛍光
【研究成果の概要】
これまでの研究計画前期では合成したCsPbBr3 NCsの一部のBrをClおよびIに置換して励起光による光劣化と自己回復を評価し、それぞれの挙動について考察した。そこで十分な進展があったと判断し、研究計画後期を開始して表面リガンドによる自己回復能力の向上の検討を行った。使用する表面リガンドにはパーフルオロデカン酸(PFDA)を選択した。PFDAは強力にCsPbBr3 NCsの表面に吸着し、蛍光強度、耐熱性、耐溶剤性および分散安定性が向上することが先行研究で明らかになっているためである。
ホットインジェクション法でオレイン酸を表面リガンドに利用した立方晶CsPbBr3 NCs (OA-NCs)を合成し、続けてPFDAが溶解したトルエンを加えた。さらに遠心分離と真空乾燥を経てPFDAが修飾したNCs (PFDA-NCs)の固体試料を回収した。そのままでは測定に不十分な量であったため、樹脂に分散させナノコンポジット膜を作製した。エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂を溶解したトルエンにNCs固体試料を加えて超音波照射で分散させ、これをシャーレ内で乾燥して膜試料を得た。大気との接触を避けるため、2枚のガラス基板で膜を挟み検体とした。これに468 nmの青色LEDを72 h光照射し、その後暗所保管した。
OA-NCsとPFDA-NCsのナノコンポジット膜試料に青色光照射するとどちらも黒色化し、その後の暗所保管中に元の色に戻った。それぞれ表面リガンドの光誘起脱離でカラーセンターとなる表面欠陥が生成し、表面リガンドの再吸着が起きたことを示唆する。OA-NCs膜の蛍光強度は光照射中に低下し、暗所保管中に回復が起きた。一方、PFDA-NCs膜では光照射中に一時的に蛍光強度が増大し、その後低下した。その後の暗所保管中に回復は見られなかった。PFDA吸着による挙動の変化の探究が必要である。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)