高効率太陽光水分解用粉末光触媒反応系の開発
【研究キーワード】
粉末光触媒 / 酸硫化物 / 硫化 / 水素生成 / 可視光 / 助触媒
【研究成果の概要】
粉末光触媒を用いて水を水素と酸素に分解する反応は最も基本的なエネルギー変換反応の1つである。本研究では、高効率な太陽光水分解反応の実現に向け、酸硫化物半導体微粒子からなる水素生成用光触媒の改良に取り組んだ。令和元年度は小径のLa5Ti2Cu0.9Ag0.1O7S5(LTCA)光触媒粉末を硫化水素気流下での加熱(硫化法)で合成できることを見出した。本年度は、硫化法で合成したLTCAの後処理による物性の改善と、助触媒担持法の改良を通じた水素生成活性向上について検討を行った。
硫黄雰囲気中での加熱処理により、硫化法で合成したLTCAの水素生成活性が7倍近く向上した。その結果、固相法で合成した既存のLTCA関連化合物を上回る水素生成速度が達成された。硫化法による小径化、および後処理による表面の非晶質層の除去が光触媒活性の向上に効果的であったと考えられる。
従来の固相法で合成したLTCA光触媒に対して含浸・水素還元法を用いて助触媒を担持し、水素生成活性の向上を図った。水素還元温度と助触媒担持量を最適化した結果、含浸・水素還元法を用いることで従来の光電着法を用いた場合よりも10倍以上高い水素生成速度を達成した。水素生成反応に対する見かけの量子効率は従来のLTCA系材料に比べて6倍以上高くなり、酸硫化物光触媒による水素生成反応の中でも最も高い値となった。XPS分析により、担持された助触媒の化学状態が活性に影響していることがわかった。
本研究により、LTCA光触媒の水素生成活性を効果的に向上させる技術が開発された。今後、開発されたLTCAを光触媒シートに応用することで、高効率なZスキーム型水分解反応が実現可能になると期待される。
本研究は外国人特別研究員の就職のため、年度途中で期間短縮し終了した。
【研究代表者】
【研究種目】特別研究員奨励費
【研究期間】2019-11-08 - 2022-03-31
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)