哺乳類および鳥類における染色体相同領域の比較マッピングとその応用に関する開発研究
【研究分野】応用動物科学
【研究キーワード】
GARS / AIRS / GART / 融合遺伝子 / 進化 / ヒト染色体21 / プリン生合成酵素遺伝子 / 霊長類における進化
【研究成果の概要】
ヒト21番染色体は医学的見地から重要な染色体と考えられ、現在最も遺伝子構造の解析が進んでいる染色体のひとつである。一方、プリンヌクレオチドの新生経路は、PRPPからIMPに至るまでの10段階の反応からなるが、ヒト21番染色体には、第2段階を触媒するGARS、第3段階を触媒するGART、第5段階を触媒するAIRSの遺伝子が連なって存在している。本研究の結果より、GARS-AIRS-GART融合酵素遺伝子とともにGARS単独の遺伝子が存在し、それぞれの遺伝子よりGARS-AIRS GART多機能酵素あるいはGARS単独酵素が生成することが示唆された。そこで、GARS遺伝子に注目し、この酵素のC末端領域について、霊長類のゲノムDNAをテンプレートとしたPCR解析を行った。まず、GARS-AIRS間のコネクター領域に設計したプライマーを用いてヒト・チンパンジー・ニホンザル・ヒヒのゲノムDNAをPCRしたところ、GARS-AIRS間にイントロンは存在せず、いずれの種でも塩基配列が一致していた。一方、既に明らかになっているGARS単独タンパク質のcDNA配列をもとにプライマーを設計し、GARS遺伝子の3'末端領域からGARS3'非翻訳領域にかけてPCRを行ったところ、霊長類の狭鼻猿類以上においては、GARSのみをコードする遺伝子とGARS-AIRS-GRATの融合遺伝子が存在することが明らかとなった。さらに、GARSのみの遺伝子の3'末端翻訳領域の塩基配列を比較したところ、前者ではヒト・チンパンジー・ニホンザル・ヒヒのゲノムDNAにおいて塩基配列が完全に一致したのに対して、後者ではヒトに比較してニホンザルで1塩基、ヒヒでは2塩基の置換が観察された。一連の結果は、GARSの単独遺伝子が他の遺伝子と進化の過程で融合して、GARS-AIRS-GART遺伝子を形成した可能性を示している。
【研究代表者】