カルシウムポンプの調節メカニズムの構造学的解明
【研究キーワード】
カルシウムポンプ / phospholamban / クライオ電子顕微鏡 / X線結晶構造解析 / イオンポンプ
【研究成果の概要】
本研究では心筋における調節ペプチドであるphospholamban(PLN)による筋小胞体Ca2+ポンプの活性調節メカニズムを原子レベルで理解することを目的としている。PLNはSERCAへのCa2+結合を妨げることで活性を抑制し、βアドレナリン信号による燐酸化を受け抑制状態を解除する。SERCA-PLN系は心筋細胞内のCa2+レベル調節の要であるため、医学的にも極めて重要であり、本研究による薬剤開発の発展も期待できる。令和3年度は、① COS-アデノウイルス蛋白質発現系を用いたSERCA-PLN融合蛋白質の大量生産系の構築、② クライオ電顕を用いた原子構造決定のための試料作製条件の最適化を行った。
① SERCAとPLNを20個のGly残基で連結した融合蛋白質が同様の制御を受けることが報告されており、まずは本研究でも20個のGlyでSERCAとPLNを遺伝子工学的に連結することを試みた。小スケールでの一過性発現実験では、融合蛋白質の発現量はSERCA単独と比較し、低い傾向にあったが、活性検出に十分な量を得ることができた。さらに、PLNの燐酸化・非燐酸化状態でのSERCAとの相互作用の違いを調べるために、疑似燐酸化変異を導入した融合蛋白質も作製した。現在、野生型及び疑似燐酸化変異体の2種の融合蛋白質について、大量生産に向けたアデノウイルスの調製を行っている。
② 融合蛋白質の発現系構築と並行して、ウサギ骨格筋から調製した筋小胞体Ca2+ポンプ(SERCA1a)を材料として、電顕観察用の試料作製条件の最適化を行った。グリッドの種類や急速凍結の条件等の検討を行い、おおむね単粒子解析法に適した試料作製条件を得ることができた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)