Discovery Sagaサイレントキーワード俯瞰

確率モデル / 地殻変動 / 地震活動 / GPSデータ / 大規模数値解析 / モンテカルロシミュレーション / 地殻変動モニタ / 地震データ / 逆解析 / カルマンフィルタ / GPS / 破壊解析 / 数値計算 / 不確定性 / 地震

研究開始当初の背景:列島地殻応力の3次元分布の推定は地震災害の予測に必須である.しかし,地下10キロ以下の地殻で応力を計測することは不可能である.このため,限られた情報を基に,応力分布の不確からしさを確率的に扱った確率モデルを構築する.各種計測データと同化することで,許容できる地殻応力分布を絞り込むことが考えられる.
研究の目的:日本列島の地殻応力の3次元分布に対する確率モデルを構築する.GPSを使った地殻変動と地震ネットワークを使った地震活動のデータを再現することで,確率モデルの絞り込みを行い,再現のみならず相応の信頼度の予測ができるモデルを構築する.構築手法に合わせて,大規模数値計算を前提とした,確率モデルの解析方法を開発する.
研究の方法:プレート等の形状等を合わせた物理モデルを構築する.これを基に,不確からしさを確率的に扱った3次元応力分布の確率モデルを合理的に構築する手法を考案する.大規模数値計算を使うモンテカルロシミュレーションによって,確率モデルを絞り込むが,絞り込まれた確率モデルをプロトタイプとして構築する.
研究成果:並列計算用の大規模な列島の物理モデルを作成し,この物理モデルを拡張することで,応力分布を取り込んだ確率モデル構築手法を考案した.このモデルを解析する新しい離散化手法を考案した.計測データを使って確率モデルを解き,構築された確率モデルの有効性を検証した.

鮮水河断層 / GPS / すべり速度 / 摩擦 / 岩石実験 / シミュレーション / 地震活動

(1)テクトニックモデルの構築
中国大陸の変形様式をGPS観測データから明らかにする試みを行った.鮮水河断層帯を含む中国大陸をいくつかの主要ブロックで区切り,それらの剛体的変位,断層すべり遅れ,及びブロックの内部変形の重ね合わせでGPS変位速度場をモデル化した.この結果,鮮水河断層帯で東側を区切る四川-雲南ブロックが,インド大陸の衝突の影響によって引き起こされる,時計回りの剛体的回転成分は7.0-9.5mm/yrと推定され,地質学的なすべり速度9mm/yrと調和的であることがわかった.また,鮮水河断層帯上のすべり遅れ分布を推定したが,その値は剛体変位成分よりはかなり小さく,GPS観測期間の最近数年間では断層がほぼ固着していると推定された.
(2)岩石実験
固着したジョイントをもつ岩石を3軸圧縮して,破壊に伴う微小破壊音(AE)を測定した.ジョイントがない岩石では,応力が比較的低い段階では,AEの震源はばらつきフラクタル次元が大きい.ジョイントがある岩石では,応力が低い段階からAE震源はジョイントに沿って集中し,とくにジョイントが曲がった場所にAEのクラスターができた.
(3)数値シミュレーション
断層面にはたらく摩擦がすべり速度・状態依存摩擦則に従うと仮定し,断層の平均的すべり速度としてGPS観測や地質調査から推定される値を用いて,鮮水河断層の地震活動モデルを構築した.モデルパラメターを適切に選ぶことにより,数百年間隔で断層の活動期が繰り返すシミュレーション結果が得られた.断層の分岐や曲がりが存在する領域や摩擦特性がすべり速度強化の領域で,破壊の一時停止が見られた.一時停止した破壊は,しばしば数年以内に破壊伝播をはじめた.これは,すべり速度強化域で非地震的な破壊がゆっくりと伝播したためである.これは,地震活動が断層に沿って移動する現象を説明する.

【研究分担者】
加藤輝之 (加藤照之)	東京大学	地震研究所	教授	(Kakenデータベース)
纐纈一起 (纐襭一起)	東京大学	地震研究所	教授	(Kakenデータベース)
小国健二	東京大学	地震研究所	準教授	(Kakenデータベース)

【研究分担者】
加藤照之	東京大学	地震研究所	教授	(Kakenデータベース)
雷興林	産業技術総合研究所	地球科学情報研究部門	主任研究員	(Kakenデータベース)