磁気励起を介したテラヘルツ光による非散逸電流生成
【研究キーワード】
光物性 / テラヘルツ / 磁性体 / 光起電力効果 / マルチフェロイクス
【研究成果の概要】
テラヘルツ帯の光照射による光起電力の実現を目指し、特にマルチフェロイクスがテラヘルツ帯に有するエレクトロマグノン共鳴に着目した研究を進めている。当該年度は、代表的なマルチフェロイクスであるペロブスカイト型マンガン酸化物を対象に研究を行った。マンガン酸化物は最低温でサイクロイド型らせんにスピンが配列する。この時、スピン秩序由来の自発分極が生じる。このスピン秩序由来の反転対称性の破れは、バルク光起電力効果の必要条件のひとつである。また、ノンコリニアならせん型スピン構造により、テラヘルツ帯にエレクトロマグノンの共鳴が現れる。このエレクトロマグノンをテラヘルツ光で共鳴励起することで、2次の非線形光学効果のひとつである光起電力効果が期待できる。この現象は。バンドギャップよりもはるかに小さなフォトンエネルギーによる光起電力効果であり、シフト電流機構を介することで実現することが理論的に予想されている。我々はパルステラヘルツ光源を用いて、実証実験を行った。テラヘルツ光源は0.2-2.0 THzをカバーするスペクトル幅を持っており、マンガン酸化物のエレクトロマグノンの帯域をカバーしている。テラヘルツ光の照射により試料の両端に発生した光電流をプリアンプで増幅したのち、オシロスコープで観測した。測定の結果、テラヘルツ光に同期した電流発生が観測された。光電流は強誘電相でのみ観測され、常誘電相では消失した。この結果は、マルチフェロイクスがテラヘルツ帯の光起電力効果を示すことを明らかにしたものである。また、光起電力の大きさが、強誘電分極の大きなにスケールせず、特異な温度依存性を示すことが明らかになった。これは、従来の強誘電体のバルク光起電力効果とは大きく異なる傾向である。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)