統計力学における確率論的モデルの数理解析
【研究分野】数学一般
【研究キーワード】
エントロピ- / 流体力学極限 / 局所平衡 / 非線型拡散方程式 / ギブス測度 / 非平衡現象
【研究成果の概要】
(1)多次元正方格子上のスピン系のMarkov過程で、(イ)相互作用するexclusion process及び(ロ)スピンが正実数値をとるモデルの各々について、粒子数無限大の極限で、スピンの密度分布が非線型拡散方程式〓u/〓t=△f(u)の解に収束することを、初期分布のエントロピ-に関する条件の下で証明した。巨視的量である関数f(u)はモデルの微視的構造から決定され、その決まり方のからくりは統計力学の考え方である局所平衡という概念によって理解される。これを数学的に厳密に扱うのは容易ではなかったが、近年S.Varadhan等が、有効な手法を開発し、この研究はその手法を数学的あるいは物理的に興味深いモデルに応用したものである。
(2)非線型拡散方程式〓u/〓t=△f(u)の弱解の一意性を弱解が定義されるための自然な条件下で示した。特に今まで知られていた解の有界性の条件をはずした。このような強い形の一意性定理は(1)の問題を扱うのに有効である。
(3)離散時間で右のみに動くZ上のexclusion processについて、時刻0で負軸上に粒子がおかれているという初期条件の下で、粒子配置のつくるランダムな分布関数が時間無限大の極限で収束することを示し、かつその極限関数を具体的に決定した。
以上の結果のうち(1)、(3)は流体力学極限の問題に関するもので、研究計画の(I)「相互作用する有限及び無限粒子の力学系又は確率過程の研究」に属し、(2)は(IV)「I〜IIIに関連したエルゴ-ド理論・関数解析の問題の研究」に属する。この他、研究協力者による(III)及び(IV)に関連した研究結果がある(研究発表の項参照)。
【研究代表者】