境界問題の根-分別体制の制作論的研究-
【研究分野】哲学
【研究キーワード】
分別 / 境界 / タブー(禁忌) / 差別 / 辺境 / 地球化 / アフステンション(差し控え) / 紛争 / アブステンション(差し控え) / タブ-(禁忌) / グローバライザビリティ / 言語 / 民間分類 / 科学的分類 / 色名体系 / タブ-
【研究成果の概要】
平成8年度には、主として境界問題を発生させる言語や記号の創造力と、その人間に対する束縛力を明確に把握するための記号論的研究を行い、その成果を海外の国際会議で発表した。平成9年度には、記号の彫琢力と束縛力を文化論的視点から欧米や東アジアの諸思想に即して検証するとともに、関連諸資料の収集に努めた。平成10年度には、さらに古代以来の諸民族の諸分別を再検討しながら現代に至って、とくに生命倫理における死生観や科学的分類と民間分類との差異、境界超克と多元的グローバリズムの可能性を主として検討した。その成果の一部は千葉大学大学院社会文化科学研究科主催の国際シンポジウムなどでも口頭発表した。
こうした識別・区別・差別の研究過程を経て、たとえば色彩論や交通論における「緑」と「赤」、人間論における「感性」と「知性」、科学論における「科学」と「非科学」、宗教論における「正統」と「異端」、認識論における「事実」と「価値」などの境界をはじめとして、広く国家や民族の地理的・歴史的境界などがすべて同根の問題点を胚胎していることが明確になると、これらヴァーチュアルな諸境界上に生ずる現実のリアルな紛争や創造の問題が浮上して来て、今後の検討課題となった。とくに現実の宗教的・民族的・政治的紛争の解決ないし解消のためには、ボーダーレス(あるいはペリフェラル)な視点から、歴史的タブーに抵触することによって派生する自己の損失をも甘受するような寛容の徳性、自己の利益追求をも適宜差し控えるような倫理的ゴールデン・ルールの確立が必要になるであろうことが理解された。
【研究代表者】