脱領域化する国際規範・制度と国民国家の反動に関する研究ー北部ラカイン州危機の事例
【研究キーワード】
ミャンマー / ロヒンギャ / ラカイン / 虐殺 / 難民 / バングラデシュ / 正義 / 危機
【研究成果の概要】
本研究課題は、ミャンマーの北部ラカイン州から約72万人の難民が隣国バングラデシュに流出したロヒンギャ危機について、この危機を解釈する言説に焦点を当て、現地フィールドワークにもとづいて正義の主張が不正義を助長する逆説について考察するものである。それにより、国際社会、政府、ローカルな諸団体の間とその内部で交錯する正義、恐怖、脅威、民族、歴史などに関する言説、また、そうした言説の形成過程や背景を分析する。本事例をもとに、国際刑事司法にかかわる脱領域化しつつある「普遍的な正義」に対して、国民国家が反動的な動きを見せるメカニズムの一端を明らかにすることが目的である。初年度にあたる2019年度はメンバー間で問題関心を共有するべく研究会を実施した。研究代表者によるロヒンギャ危機とミャンマー国内安全保障政策の関連についての報告や、分担者(根本敬)によるロヒンギャの歴史認識の報告を通じて、同問題について複数の事実認識があり、それぞれが構築された言説について確認した。その後、各自が研究テーマを設定するとともに、先行研究の検討と研究計画の作成をおこなった。初年度末にはミャンマー、バングラデシュ、オーストラリアなどでの共同および個別での現地調査、またアジア学会(AAS)での研究報告を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう国際的移動の制限を受けて延期とした。それに伴って一部直接経費を繰越した。
【研究代表者】