ポスト古代ゲノム解読期における家畜化概念のヒューマンアニマルボンド的学融合刷新
【研究キーワード】
家畜化 / 動物遺残身体 / 分子系統解析 / 機能形態 / 農村社会 / 動物遺残体 / ヒューマンアニマルボンド / 民俗 / 人類誌
【研究成果の概要】
タイ、ラオス、ベトナム、中国、スリランカ、トルコ、マダガスカル等を想定した中規模な現地調査計画をもち、またハンガリー、イタリアなどの古典的家畜育種地域との比較を考えていたが、コロナ情勢により、調査計画は期待通りには進まなかった。そこで用意した手法のうち、文化人類学、農村社会学、人類生態学、人文地理学、現地での文化財科学に関わる部分を縮小、代わりに博物館に既存の貴重資料の解析や、日本国内の移動によって検討が進む在来家畜や、離島の農業誌に調査をシフトさせた。資料解析では、生物学的には分子遺伝学的検討や形態学的解析を重視した。
家禽・セキショクヤケイは、既存データを用いた形態解析に切り換え、生物学的には機能形態学を強力に進めた。ラオスのセキショクヤケイやタイの闘鶏を用いた新たな解析により、家禽全体の人為育種特性を明らかにすることができた。分子遺伝学はアジアの地鶏の系統関係の解析に取り組み、大きな解析成果を得つつある。一方、現地調査を望んでいた動物考古学は進捗しなかったが、出土標本を用いた微細形態学的解析による機能の理論化などが研究の中心となり、高度な成果を上げた。民俗学、生態人類学方面は、蓄積された標本資料による人と動物の関係に関する新たな体系づくりに取り組んだ。
国内では離島における家畜飼育誌の検討が進んだ。これは本来は途上国による人と家畜の間柄を直接調べる狙いがあったところを、主に近世以降に継続した国内の人と家畜の関係を調べたものである。理論化にはまだ時間を要するが、日本という島嶼の特異な事例を導入することで、新たな家畜論が展開できる可能性を得ている。
現実に変化する海外調査の可能性・比重に対して、柔軟な研究手法と研究主題の導入で対処し、渡航可能性の状況に応じた最大限の研究成果をあげることに心を配った。人と家畜の関係を語るうえで幅広い実績を得ることができたと総括できる。
【研究代表者】