第二言語における発音習得プロセスの実証的研究
【研究分野】外国語教育
【研究キーワード】
日本語教育 / 英語教育 / 第二言語習得 / 音声習得 / 発音学習 / 臨界期仮説 / シャドーイング / ストラテジー / 言語学
【研究成果の概要】
臨界期を過ぎてから外国語学習を開始した場合、ネイティブレベルの発音習得は不可能で、母語のアクセントが残ってしまうという定説、いわゆる「臨界期仮説」は言語習得関係者間において、よく知られている。本研究では、まず、この臨界期仮説を検証した。
2004年度に作成した日本語(101名)・英語学習者(99名)による発音タスク(単語・文・会話)の録音データを用いて、2005年度に評価用CD・ROMを作成し、日本語・英語母語話者による評価(各5名、各15時間)を行った。評価用CD・ROMには、学習者と母語話者の音声ファイルをランダムに配置した。
本調査の結果、確かに年齢要因は発音の習得度に影響を与えるが、臨界期を過ぎてから学習を開始したにも関わらず、ネイティブレベルの発音習得を達成した学習者が複数存在することが、日英両言語において確認された。たとえば、学習開始年齢が18歳、到着年齢が22歳というように、完全に成人してから学習を開始したにも関わらず、ネイティブレベルの発音習得を達成した学習者も2名存在することがわかった。本調査は、実際に大人になってから学習を開始した場合でも習得は可能であり、年齢が若くなければネイティブレベルの発音習得は不可能で母語のアクセントが残ってしまうという定説を否定する結果となった。
次に、これらのGood learnersへのフォローアップ・インタビューを行った結果、発音習得度の高い学習者の共通性が明らかになった。それは、1)学習初期にインプット洪水を経験していること、2)1音声的側面に焦点を当てた学習経験があること、3)豊富な0リソースを活用していること、4)シャドーイング等の発音学習方法を用いて独自の学習を行っていること、5)教室環境と自然環境からなる混合環境の利点を活用していることなどである。このようなストラテジーは、教育活動においても言語教育の現場に取り入れることができると考えられる。しかし、時間の関係上、当初予定していた教育効果検証までは行うことができなかった。
本研究の成果は国内外の学会・研究会で発表した。現在、研究成果報告書を作成中であり、6月までに印刷し、言語教育関係者に配布する予定である。
【研究代表者】