年金制度にみる近代トルコ社会
【研究キーワード】
オスマン帝国 / トルコ / 福祉 / 年金 / イスラーム社会 / 近代 / 年金制度 / イスラーム
【研究成果の概要】
本研究は、オスマン帝国において近代的な社会保障システムとしての年金制度が、いつから、どのような形で整備されていったのか、また、それがトルコ共和国にどのように継承されたのか、さらに、こうした制度が人々の生活にどのような影響を及ぼしたのかについて、オスマン帝国・トルコ共和国の公文書と公営・私営企業が所蔵する一次史料、新聞・雑誌等を手掛かりに考察し、イスラーム社会における社会保障のあり方、オスマン帝国末期からトルコ共和国初期の社会の実像、具体的には家族や就業のあり様といった人々のくらしの実態を明らかにしようと試みるものである。同時にオスマン帝国とトルコ共和国の連続性に関する議論についても、社会史的観点から新たな見解を提示することを目的とする。
令和3年度も昨年同様コロナ・パンデミックのため予定していたトルコ共和国での史料収集を実施することができなかった。そのため研究計画を変更し、以下の2つのテーマを設定して、各々についてこれまで収集した一次史料のデータベース化と一部の史料の解読・分析を行った。
第1のテーマは近代西欧型の年金制度が導入される以前のオスマン帝国における年金制度や社会福祉の歴史を先行研究や公文書によって明らかにするというもので、主にオスマン朝文書館所蔵の公文書のうち年金の支給に関する史料のデータベース化を行った。
第2のテーマは戦時下における年金支給の問題と20世紀初頭のオスマン社会における庶民の家族のありように関するもので、史料として用いるのはトルコ共和国文書館所蔵のオスマン海運の経営会議議事録(1911-22年分、この間オスマン帝国は絶え間ない戦争の渦中にあった)の中で年金支給について議論された部分である。
本年度は特に第2のテーマに重点を置き、当該史料の解読と分析を行って研究ノートを作成し、その成果を論文にまとめて学術雑誌上で公開した(研究成果参照)。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)