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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年9月30日

高校生が市販のカメラで放射線の「光」の撮影に成功

授業1コマで実施できる新しい放射線実験の提案を目指して

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
専用の高感度センサーを必要とせず、学校の授業1コマで実施できる放射線イメージング教材の実現につながることに期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域数物系科学工学医歯薬学
【Sagaキーワード】
情報通信工学/情報通信/CERN/シンチレーション光/光検出器/粒子検出器/シンチレータ/ミュオグラフィ/素粒子/素粒子実験/SiPM/宇宙線/検出器/放射線検出器/セシウム/センサー/センシング/半導体/放射線
2026-9-24●工学系佐々木 柚榎

発表のポイント

市販のデジタルカメラと遮光箱のみで、放射線がシンチレータ中で放つ微弱な光(シンチレーション光)を直接撮影することに成功。
性質の異なる2種類のカメラを用い、²⁴¹Am、¹³³Ba、¹³⁷Csの3種類の線源を相互に比較した結果、撮影された光の空間的な広がりが放射線の種類とエネルギーを反映することを示した。
専用の高感度センサーを必要とせず、学校の授業1コマで実施できる放射線イメージング教材の実現につながることに期待。
大阪大学SEEDSプログラム受講生の高校生が筆頭著者として、査読付き国際誌に発表。

発表概要

大阪大学SEEDSプログラム受講生の佐々木柚榎さん(イタリア・United World College of the Adriatic(高校)2年生)、同大学院工学研究科の和田有希招へい准教授(兼:北海道大学大学院理学研究院准教授)、加速キッチン合同会社の田中香津生さん(兼:早稲田大学理工学術院総合研究所研究院准教授)らの研究グループは、遮光箱に入れたシンチレータを市販のカメラで撮影し、放射線がヨウ化セシウム結晶の中で生じさせるかすかな発光を直接捉えることに成功しました。
放射線を「見る」ために、近年は、シンチレータと半導体光検出器(SiPM)を組み合わせた簡易な放射線検出器が広がっていますが、放射線測定の中核であるシンチレーション光がただちに電気信号へ変換されるため、その光そのものを目にすることはできませんでした。
今回、遮光箱に入れたシンチレータの撮影を、性質の異なる2台のカメラを用いて、アメリシウム241(²⁴¹Am)、バリウム133(¹³³Ba)、セシウム137(¹³⁷Cs)の線源で検証したところ、どちらのカメラでも、シンチレーション光を捉えることができました。今後、教育現場で、「放射線が光に変わる瞬間」を自分の目で確かめ、さらに複数の線源を比較することによって、放射線測定の原理を体験的に理解できる教材の実現につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年9月1日(火)に、英国物理学会が発行する「Physics Education」に掲載されました。



図1. 左端に置いた放射線源からの放射線(ガンマ線)によるシンチレーション光の様子。²⁴¹Amが一番線源に近い部分だけで光り、¹³⁷Csが最も奥の方まで光が広がっている。

研究の背景

放射線は目に見えないため、その存在を「見る」ための教材は、長らく霧箱がほぼ唯一の選択肢でした。近年は、シンチレータ(放射線が当たると微弱な光を放つ結晶)と半導体光検出器(SiPM)を組み合わせた簡易な放射線検出器が教育現場にも広がっています。しかし、これらの装置では放射線測定の中核であるシンチレーション光がただちに電気信号へ変換されるため、その光そのものを目にすることはできませんでした。

研究の内容

本研究では、遮光箱に入れたシンチレータを市販のカメラで撮影し、放射線がヨウ化セシウム結晶の中で生じさせるかすかな発光を直接捉えることに成功しました。
用いたカメラは、性質の異なる2台です。1台は市販のコンパクトデジタルカメラ、もう1台は高校の天文部やアマチュア天文家に広く使われている冷却カメラで、10万円台で入手できる量産品です。両者を比較することで、どの程度の機材があればシンチレーション光を捉えられるのかを検証しました。
線源には、アメリシウム241(²⁴¹Am)、バリウム133(¹³³Ba)、セシウム137(¹³⁷Cs)の3種類を用い、それぞれの結果を相互に比較しました。その結果、2台のカメラどちらでもシンチレーション光を捉えることができました。また、撮影された発光の空間的な広がり方が、放射線(ガンマ線)のエネルギーの違いを反映することが示されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

専用の高感度センサーや高価な装置を必要とせず、学校の授業1コマで実施できる放射線イメージング実験として提案するものです。生徒が「放射線が光に変わる瞬間」を自分の目で確かめ、さらに複数の線源を比較することによって、放射線測定の原理を体験的に理解できる教材となることが期待されます。

佐々木柚榎さんの大阪大学SEEDSプログラムでの取り組み

2023年度より、大阪大学大学院工学研究科 電気電子情報通信工学専攻センシングシステム領域(牛尾研究室)の和田有希 助教(当時。現・北海道大学大学院理学研究院 准教授、大阪大学大学院工学研究科 招へい准教授)のもとで、「ウェブカメラとシンチレータを組み合わせた放射線測定器の開発」をテーマに研究を開始しました。現在もイタリアの United World College of the Adriatic(ドゥイーノ)に在籍しながら、大阪大学SEEDSプログラム受講生として、この研究を継続して進めています。



図2. 大阪大学の研究室で測定を行う佐々木柚榎さん

特記事項

掲載誌:Physics Education(IOP Publishing・英国物理学会)※査読付き
論文タイトル:Using Consumer Cameras to Observe Scintillation Light from Radiation
著者:佐々木柚榎、和田有希、田中香津生
掲載日:2026年9月1日
DOI:10.1088/1361-6552/ae95cf
巻号:第61巻 第5号 055007
本研究は、加速キッチン合同会社および大阪大学SEEDSプログラムの支援のもとで行われました。

大阪大学SEEDSプログラムについて

大阪大学SEEDSプログラムは、科学技術に強い関心と意欲をもつ高校生等を対象に、講義聴講や議論の場を提供したり、大学の研究環境のもとで探究活動に取り組む機会を提供したりする次世代科学技術人材育成プログラムです。主に高校1, 2年生を対象としたこのプログラムは2015年に立ち上げられ、毎年130〜150名が受講生となっています。佐々木さんは史上最年少の中学2年生でこのプログラムの受講を開始しました。
URL:https://seeds.osaka-u.ac.jp/
2026年6月16日プレスリリース:SEEDSプログラム受講生を含む高校生チームがコンパクトな2次元放射線イメージング検出器を開発。欧州CERNにて素粒子実験後、学術誌に論文掲載!

連携機関(加速キッチン合同会社)について

手のひらサイズの素粒子検出器を無料で貸与し、研究機関と連携して高校生等による宇宙線・素粒子の探究活動を支援している。これまでに300台以上の宇宙線検出器「Cosmic Watch」を貸与し、200名以上の生徒の家庭での実験を支援してきた。今後は、校舎の構造を宇宙線で透視するミュオグラフィなど、生徒が主導する探究活動のさらなる広がりが期待される。
加速キッチン合同会社(https://accel-kitchen.com/)
本件に関する加速キッチンのページ:https://accel-kitchen.com/press-release/2026-XX-XX-scintillator-imaging/