
瞬きが幼児の実行機能とその脳機構の発達を映し出す
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 瞬きは、特別な装置がなくても目視でおおよそ把握できるため、保育所や幼稚園、家庭といった日常の場面で実行機能の育ちをみる手がかりの一つとなることが期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
この研究の主な対象者企業・研究者の方
公開日
研究者情報
研究者名森口 佑介
京都大学 教育研究活動データベース
概要
よく瞬き(まばたき)をする幼児ほど、ルールの切り替えに上手に対応することができ、脳の前頭前野の中でもこの課題の遂行に重要な右背外側部の活動が高いことを明らかにしました。このことは、瞬きが幼児期の実行機能の発達をうかがい知る手がかりとなる可能性を示しています。幼児期は、行動や思考、感情を制御する認知スキル「実行機能」が最も著しく発達する時期です。その個人差は、後の学業成績や社会性、さらには成人期の健康や社会的成功とも関わることが分かってきました。そのため、実行機能を支える脳機構の解明が重要な課題となっています。しかし、幼い子どもでは拘束性の高い計測や侵襲的な計測が難しく、その脳機構の成熟を捉える手立てはほとんどありません。
そこで、桑⽔隆多 筑波⼤学体育系/ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター助教、森口佑介 文学研究科教授らの研究チームは、私たちが意識せずに行っている瞬き(まばたき)に着目しました。瞬きの頻度(自発性瞬目率)は、ドーパミンをはじめとする神経修飾系の働きに影響を受ける可能性が注目されてきました。瞬きは生まれて間もない頃は極めて少ないのですが、乳児期から小学校に入る前にかけて数倍に増えるとともに、同じ時期に大きな個人差が現れます。ちょうど、実行機能が急速に発達する時期と重なります。
本研究では、3から6歳の幼児を対象に、ルール切り替え課題中の脳の前頭前野の活動を機能的近赤外分光分析法(fNIRS)で計測し、あわせてビデオ映像から自発性瞬目率を測定しました。その結果、瞬きの多い子どもは切り替えの成績が良いことが分かりました。また、瞬きと関連していたのは前頭前野の広範囲な活動ではなく、この課題の遂行に重要な右背外側部の活動に限られていました。年長の子どもほど、活動がこの部位に偏る傾向もみられ、必要な部位が選択的に働くようになる過程と、瞬きの増加とが結びついている可能性がうかがえます。瞬きは、特別な装置がなくても目視でおおよそ把握できるため、保育所や幼稚園、家庭といった日常の場面で実行機能の育ちをみる手がかりの一つとなることが期待されます。
本研究成果は、2026年9月15日に国際学術誌「Communications Psychology」にオンライン掲載されました。

研究者のコメント
「考えや行動を柔軟に切り替える力である実行機能が、どのように育つかは世界的に関心を集めています。本研究では、子どもの瞬きの頻度が実行機能やそれを支える前頭前野の活動と関連することを示しました。今後、瞬きが、子どもの実行機能の育ちを知る手がかりとして活用できる可能性があります。」(森口佑介)
詳しい研究内容について
瞬きが幼児の実行機能とその脳機構の発達を映し出す書誌情報
【DOI】https://doi.org/10.1038/s44271-026-00524-6
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/303597
【書誌情報】
Ryuta Kuwamizu, Nozomi Yamamoto, Kota Otani, Yusuke Moriguchi (2026). Emergent blink rate in early childhood is associated with neural origins of executive function.Communications Psychology, 4, 126.
京都大学 研究