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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年8月5日

TISIと大阪大学 量子情報・量子生命研究センター、 量子コンピュータで実用規模10,000件超の組合せ最適化を 商用最適化ソルバーと同精度で達成

持続可能な社会を支える電力需給最適化を実証

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
電力需給の安定化や脱炭素化などエネルギー分野をはじめ、物流・金融・製造など幅広い産業領域において、高度な最適化課題の解決が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域環境学数物系科学総合理工工学
【Sagaキーワード】
ハードウェア/最適化アルゴリズム/量子アルゴリズム/アルゴリズム/スケジューリング/機械学習/最適化/量子計算/ポートフォリオ最適化/再生可能エネルギー/ポートフォリオ/計算量/量子コンピュータ/量子情報/最適化問題/データ解析/量子ビット/持続可能/組合せ最適化/大規模計算
2026-7-30●工学系量子情報・量子生命研究センター教授藤井 啓祐

発表概要

TISインテックグループのTISI株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役 社長執行役員:岡本 安史、以下:TISI)と、国立大学法人大阪大学 量子情報・量子生命研究センター(所在地:大阪府豊中市、センター長:北川 勝浩、以下:QIQB)は、量子最適化アルゴリズム「パウリ相関エンコーディング(以下:PCE)」を活用し、従来の量子計算では困難であった大規模組合せ最適化問題への適用可能性を実証したことを発表します。
本実証では実社会ユースケースとして10,000件以上の電力リソースを対象とした電力需給最適化に量子コンピュータを活用し、商用最適化ソルバーと同等精度の結果が得られることを確認しました。これにより、電力需給の安定化や脱炭素化などエネルギー分野をはじめ、物流・金融・製造など幅広い産業領域において、高度な最適化課題の解決が期待できます。
また、本取り組みは2026年7月に量子技術の産業応用を扱う国際学術雑誌「Physical Review Applied」に投稿し、現在査読過程にあります。さらに、本成果を発展させた研究内容は、量子技術分野の国際会議 IEEE Quantum Week 2026(QCE26)のTechnical Paperとして採択されており、2026年9月にカナダ・トロントで発表予定です。



図. 量子コンピュータによる分散電力リソースの一括最適化イメージ

研究の背景

物流計画、金融ポートフォリオ、製造スケジューリング、エネルギー運用など、さまざまな社会課題で良い選択を導くために、「組合せ最適化問題」という手法が活用されています。しかし、対象規模が増えるにつれ計算量は急激に増加するため、大規模問題を高速かつ高精度に解くことが課題となっています。その中でも電力需給調整は、多数の電力リソースを組み合わせる必要があることから、大規模な「組合せ最適化問題」に対応する必要があります。
一方で、再生可能エネルギーの導入拡大や需要家ニーズの多様化により電力事業者やリソースアグリゲーターには、需給バランスを安定的に保ちながら、調達コストや需給リスクを抑える高度な運用が求められています。電力需要は利用する家庭や事業者ごとに特性が大きく異なることから、多数の電力リソースの最適な組み合わせを導き出すには、膨大な計算量を要し、従来の手法では対応が困難でした。このような背景を受け、TISIとQIQBは量子計算技術を活用し、大規模な組合せ最適化問題への適用可能性を検証する共同研究を進めてきました。

研究の内容

2025年に提案されたPCEは、多数の最適化変数を少ない量子ビット数で効率的に表現できるため、従来は困難だった大規模な組合せ最適化への適用が期待される手法です。本研究ではこのPCEを活用し、従来検証である約20需要家規模から10,000件超規模へと計算対象を拡張しました。
実証を通じて、量子計算による大規模計算に対しても、高精度な最適化結果が得られることを確認しました。これにより、需給安定化と調達電力の変動抑制を両立する新たな手法としての有効性が示されました。
量子計算により対応可能な需要家数を大幅に拡張
PCEを活用することで、従来困難であった大規模な組合せ最適化問題に対応可能。これにより、10,000件超の需要家ポートフォリオへと計算規模を大幅に拡張することに成功。利用者が増えてモデルが複雑になっても、必要な資源(量子ビット)を効率良く抑えられることを確認。



図. 最小限の量子ビットで大規模計算に対応可能とするイメージ
商用最適化ソルバーと同等精度の結果を確認
量子計算で算出した電力の最適な組み合わせが、既存の商用最適化ソルバーが出した最適解と高い精度で一致することを確認。量子最適化の信頼性を確かめるとともに、大規模な電力需給最適化にむけた実用化の可能性も確認。



図. 電力需要ポートフォリオ最適化結果の比較
貪欲法による近似解(左)、PCEを用いた量子計算結果(中央)、商用最適化ソルバーによる最適解(右)。貪欲法では需要配分にばらつきが見られる一方、PCEを用いた量子計算の結果は、希望調達電力を満たしつつ標準偏差が抑えられており、最適解と高い精度で一致することを確認。

本成果の意義

本成果は、量子コンピュータを活用したPCEが、10,000件超の実用規模の組合せ最適化問題に適用可能であることを示したものです。これにより、量子技術を活用した業務課題の解決や効率化について、企業が具体的なユースケースを用いて検証できる段階に近づいています。電力分野に限らず、物流、金融、製造など多様な業界における複雑な最適化問題への応用が期待されており、業務効率化や競争力向上への貢献が期待されます。

今後について

本成果を踏まえ、TISIとQIQBは、これまでの量子最適化の取り組みに加え、量子機械学習を含む新たな量子アルゴリズムの開発にも着手し、その適用領域を拡大します。これにより、データ解析や予測精度の向上など、最適化の前工程を含む幅広い業務領域に対しても量子技術を活かし、実業務で有効性を検証できる基盤を整えます。
TISIは、実データを用いた実証フィールドでの効果検証や、量子ハードウェア特性を踏まえた性能向上を進めます。2026年度中に量子最適化アプリの試作を行い、TISIの脱炭素ソリューション「Carbony VPPプラットフォーム」との連携など、実運用での適用可能性を検証する予定です。
また、量子機械学習との融合や、物流・金融・製造分野への適用検討も進め、量子アルゴリズムの社会実装をさらに拡大していきます。

特記事項

本研究開発は、科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)「量子ソフトウェア研究拠点」(JPMJPF2014)、文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)「知的量子設計による量子ソフトウェア研究開発と応用」(JPMXS0120319794)による支援を受けて実施されました。