カビが植物の硬い壁を突き破る力の正体を解明
―糸状菌の新規ポリマーが生物界屈指の膨圧を制御―
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 細胞における膨圧発生メカニズムの理解を深めるとともに、病原性のみを抑制する低環境負荷型農薬の開発に貢献することが期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
Research NEWS
理工研究域フロンティア工学系/ナノ生命科学研究所、助教
宮澤 佳甫MIYAZAWA, Keisuke
2026/7/17
概要
理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター植物免疫研究グループの熊倉直祐上級研究員、白須賢グループディレクター、金沢大学理工研究域フロンティア工学系/ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の宮澤佳甫助教らの国際共同研究グループは、植物病原菌(糸状菌)における膨圧(※1)発生に必要な新規遺伝子ペアを発見し、これが新規ポリマーの生合成を通じて感染に必要な膨圧を制御することを明らかにしました。本研究成果は、細胞における膨圧発生メカニズムの理解を深めるとともに、病原性のみを抑制する低環境負荷型農薬の開発に貢献することが期待されます。
今回、国際共同研究グループは、植物病原糸状菌(カビ)が宿主植物に侵入する際に形成する感染用の細胞「アプレッソリア(付着器)(※2)」に着目しました。アプレッソリアは、車のタイヤの空気圧の約40倍にも及ぶ生物界屈指の高い膨圧を生み出し、その力で硬い植物表面を突き破り、感染を可能にします。
国際共同研究グループは、アプレッソリア形成時に遺伝子発現が上昇する機能未知の遺伝子を、独自に開発したゲノム編集技術で破壊し、病原性に寄与する遺伝子のスクリーニングを行いました。その結果、膨圧形成に必須な二次代謝物生合成酵素(※3)ペアであるPKS2およびPBG13を同定しました。さらに、PKS2およびPBG13はジヒドロキシヘキサン酸(dihydroxyhexanoic acid:DHHA)(※4)をモノマー(単量体)単位とするポリマー(重合体)を生合成することで、アプレッソリアの膨圧形成に寄与することを明らかにしました。
本研究は、科学雑誌『Science』オンライン版(2月12日付:日本時間2月13日)に掲載されました。
金沢大学 研究