海洋におけるメタン生成に関する微生物学的研究
【研究分野】水産学一般
【研究キーワード】
メタン / メタン生成細菌 / 海洋 / 動物プランクトン / 腸内 / 糞粒 / 堆積物 / エーテル型脂質 / オキアミ / fecal pellet / 膜脂質 / 硫酸還元細菌 / 拮抗
【研究成果の概要】
メタン生成細菌の膜脂質は特異的なエーテル型脂質で構成されているので、その測定により海洋堆積物におけるバイオマスの推定とメタン生成活性の測定を行った。東京湾、相模湾、駿河湾およびその沖合い海域や硫酸還元菌の活性を油壺湾において堆積物試料を採取した。油壺湾、東京湾、駿河湾奥のような富栄養海域の堆積物における間隙水中のメタン量は1g当たり0.12-93nmolであり、メタン生成細菌の脂質量は17-152ngで、これらの数値には互いに相関関係が認められた。また、メタン生成細菌の培養の結果から、硫酸還元菌と競合する基質である酢酸や、水素と二酸化炭素の混合気体を利用するものの他に、硫酸還元菌の利用できない基質であるメタノールを利用できるものも多く存在することが明らかになった。そのメタン生成活性は外洋域に比べて高かった。次に相模湾内における堆積物において1g当たりメタン量は0.32-0.65nmol、脂質量は4.6-21ngであった。この海域のメタン生成細菌はメタノールを利用するものが少ない傾向がみられた。駿河湾沖堆積物中でのメタン生成は実際に行われているが、硫酸還元菌と拮抗しているメタン生成細菌はほとんど認められず、メタノールを利用するものは存在はしたもののその活性は低かった。動物プランクトンの中でも特に生物量の多いカイアシ類とオキアミ類およびその糞粒についてメタン生成活性を測定した。オキアミ類約30個体の糞粒からは1.8μmolのメタン生成が測定され、メタン生成細菌が腸内に存在していることが示唆された。60日間培養した動物プランクトンからメタン生成量は乾燥重量1g当たり615μmolにもなった。また、メタン生成細菌はメタノールを利用できるものが多かったが、硫酸還元菌の活性を抑えるとメタン生成量が減少することから、動物プランクトン腸内ではメタン生成細菌は基質に関して硫酸還元菌に依存していることが示唆された。
【研究代表者】