宇宙ロボットの非線形性に着目したロバスト制御(本体の姿勢変動とアームの弾性振動に対する協調制御)
【研究分野】機械力学・制御
【研究キーワード】
宇宙ロボット / 姿勢制御 / 離散時間スライディングモード制御 / ロバスト制御 / 非線形制御 / チャタリング / 実験 / スライディングモード制御 / DSP制御 / スラスタ / リアクションホイール
【研究成果の概要】
宇宙機搭載型のロボットアームや軌道上作業機のような空間浮遊型宇宙ロボットの近い将来の実用化が期待されている.空間浮遊型宇宙ロボットが軌道上で作業を行う際にはロボットアームの運動に伴う反力により宇宙機本体の姿勢変動を生じるので,これを低減する制御方式の開発が望まれいてる.
空間浮遊型宇宙ロボットの場合,システム特性がアームの運動の関数となる非線形性があり,アクチュエータであるスラスタ,リアクションホイルなどは制御力に拘束があり,かつ,消費する燃料が有限であるのでなるべく制御エネルギを小さくする必要がある.本研究では,この様な制約のもとに最適な姿勢制御を実現する制御方式の開発を目的とする.特に,本研究は,宇宙ロボットが作業中に強い力学的非線形性を有するため,線形制御系として,制御系を設計した場合,姿勢制御に多くのエネルギを要したり,あるいは多くの時間を要することになり,結果的に宇宙空間での高速な作業が不可能になる問題に着目し,非線形適応制御の有力な方法で優れたロバスト性を有するスライディングモード制御を宇宙ロボットの姿勢制御に適用することを最大の特色として研究を行った.
本研究ではデブリ捕捉回収時の姿勢変動を念頭において安定に抑制する制御方式を開発するため,本体姿勢が回転1自由度の単腕2リンク模型を用いた実験により,連続時間スライディングモード制御,離散時間PD制御,離散時間スライディングモード制御の3種類についてシュミレーションと実験から比較検討し離散時間スライディングモード制御がディジタル制御理論のデッドビ-ト制御に類似した性能を見いだすことによってチャタリング抑制に優れた,そしてロバストな制御系を構成できることを明らかにした.
2年間の研究から得られた成果を要約すると以下のようなる.(1)アームの運動を考慮した宇宙ロボットの3次元運動方程式を姿勢角のみを未知数として導いた.(2)アームの運動を宇宙ロボット本体への外乱として考える外乱トルク補償制御を姿勢制御アルゴリズムとして提案した.(3)最短時間・最小燃料制御アルゴリズムを宇宙ロボット姿勢制御問題に適用し,姿勢変動角および燃料消費の立場から外乱トルク補償制御法と比較し,後者の方が必要なスラスターの力積は小さいことを示して,その有効性を確認した.(4)非線形方程式で表される宇宙ロボットのフィールドバック制御にスライディングモード制御を適用した協調制御系を提案した.(5)水平面内で回転可能な宇宙ロボット模型に協調制御を適用した結果,姿勢変動を約1/30に抑制でき,協調制御法が有効であることが分かった.(6)協調制御系は宇宙ロボットシステム推定誤差に対してロバスト性があることを数値計算より明らかになった.(7)離散時間スライディングモード制御はデブリ捕捉時のようなシステム非線形性,システム推定誤差などに対してロバスト性を有しており,実用的であることが分かった.(8)離散時間スライディングモード制御は離散時間PD制御などの他の方法に比べて姿勢角の補償に優れた性能を有してることが分かった.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
安住 一郎 | 石川島播磨重工業 | 技術研究所 | 研究員 |
斉藤 修 | 石川島播磨重工業 | 技術研究所 | 研究員 |
小林 信之 | 石川島播磨重工業 | 技術研究所 | 課長 |
西村 秀和 | 千葉大学 | 工学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】試験研究(B)
【研究期間】1993 - 1994
【配分額】12,000千円 (直接経費: 12,000千円)