量子化イオン照射による半導体ナノ構造の加工と特性制御
【研究分野】電子・電気材料工学
【研究キーワード】
量子化イオン照射法 / シングルイオン注入法 / 不純物 / ドーパント / 半導体 / 集束イオンビーム / 表面改質 / ナノ構造 / 単一イオン抽出 / 2次電子検出 / 不純物揺らぎ / ドーパント個数制御 / SIMOX基板 / 異方性エッチング / ゆらぎ / 活性化 / MOS界面準位
【研究成果の概要】
当該研究期間初年度に, イオンを1個ずつ照射可能な量子化イオン照射法の要素技術の改良、および基礎データの収集を完了し、最終年度(H.11)に、当初、目的として掲げた超LSIの更なる微細化の際に障害となる不純物原子数のゆらぎによる素子特性ゆらぎを初めて制御するに至った。具体的な成果は以下の通りである。
(1)ドーバント個数制御性の改善
量子化イオン照射装置における2次電子検出系の改良を行い、ドーパント個数の制御性を左右する2次電子検出率を90%に改善することに成功した。従来のイオン注入法で生じる特性ゆらぎを30%まで制御できる見通しを得た。
(2)イオン1個当たりの半導体電気的特性変化量の定量的評価
不純物の統計的ゆらぎに起因する特性ゆらぎを抑制するために、イオン1個当たりの素子特性変化量の評価を初めて試みた。その結果、コンダクタンス増加量を18nS/ion、およびフラットバンド電圧減少量を4.5mV/ionと定量的に明らかにした。
(3)微小半導体の電気的特性制御
まず、サブミクロンサイズの抵抗体を作製し、コンダクタンスの度数分布を取得した。平均値からのばらつきが大きく、ゆらぎを63%と評価した。コンダクタンスをある一定値に揃えるため、予め実験的に求めたイオン1個当たりのコンダクタンスの増加量(18nS/ion)に基づき、抵抗体毎に必要な数だけ不純物原子を1個ずつ注入することによって、ゆらぎを63%から13%に大幅に低減させることに成功した。このゆらぎ抑制効果は、不純物原子の個数だけでなく、シングルイオン注入法によって不純物原子の位置もある程度制御された結果も併せて明らかにした。
(4)量子化イオン照射装置の高精細化
不純物ゆらぎの抑制を試みる過程で、不純物原子の離散性という新しい物理的描像の理解の必要性が新たに生じた。これを定量的に検証するためには、ナノ領域に精度良く不純物を導入することが不可欠であると判断し、イオンビームから1個のイオンを抽出するという操作故に留まっていたサブミクロン程度の制御性を格段に向上させるために、集束イオンビーム(FIB)の光学系の設計を行い、高精細化の見通しを得た。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
原 謙一 | 早稲田大学 | 理工学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
豊島 義明 | 東芝セミコンダクター社 | マイクロエレクトロニクス研究所 | 主査 |
松川 貴 | 早稲田大学 | 理工学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1999
【配分額】12,900千円 (直接経費: 12,900千円)