3d遷移金属および希土類合金の硬X線発光磁気円二色性の研究
【研究分野】金属物性
【研究キーワード】
放射光X線 / X線発光 / 磁気円二色性 / 磁性材料 / 磁性電子 / 元素選択性 / 電子状態 / 磁気構造 / 中間状態
【研究成果の概要】
本研究は、X線によって物質中の電子が中間状態に励起された後の2次光学過程から放出されるX線のエネルギースペクトル(XES)においてスピン情報をもったXES、すなわちMCD-XESの測定法の開発と遷移金属および希土類金属への応用を目的としている。
最も大きな成果は、KEK-PFにおいてSm-Co合金試料の発光MCDの測定を行い精度のよい測定結果を得るとともに、この実験結果を理論計算グループの計算結果と比較検討したことである。この結果は論文としてまとめ学術雑誌上で公表された。その内容は、Sm_<21>Co_<79>アモルファス合金のL_3M_<4,5>とL_2M_4遷移に対するMCD-XESを精密に測定し、そのスペクトルを双極子遷移成分および四重極遷移成分に分離解析するとともに、これらのスペクトル対する精密な理論計算を行い各成分の内容を詳細に解析したものである。
また、SPring-8においては、XES用のビームラインを立ち上げのために、東北大多元研のメンバーと共に、SPring-8におけるXES測定のための測定装置の製作と整備および種々の基礎実験を行った。すなわち、集光ミラー、二次元検出器、二次元検出器用エネルギー解析装置およびゴニオメータの設置・整備を行った。また、XESのMCD実験を遂行するために、円偏光生成装置(移相子システム)を設計、製作し、動作テスト、試験的スペクトル測定を行った。
これにより、MCD-XESを含め広い範囲に応用可能な高分解能XAFSの測定・解析法を確立できた。これはLifetime-broadening-suppressed/free XANESと命名されており、XESのスペクトルから内殻電子の寿命に由来する分解能の劣化の影響を受けない高分解能のXANESスペクトルを導出するものである。この測定法は、特に将来光源の強度が数倍向上した場合、MCD-XESの応用をきわめて広範な領域に広げるものである。
【研究代表者】