二枚貝類のmtDNAゲノムの特異な進化とその系統学的意義
【研究分野】系統・分類
【研究キーワード】
二枚貝 / mtDNA / ゲノム / 遺伝様式 / 進化 / ゲノム構造
【研究成果の概要】
後生動物のmtDNAゲノムは一般に37種類の遺伝子をコードしており、母性遺伝する。しかし、軟体動物のムラサキイガイではmtDNAの遺伝子配置や遺伝子組成が他の動物と異なり、mtDNAが両性遺伝することも報告されている。しかし、他の二枚貝類についてはmtDNAがほとんど研究されていないため、これらの特異なゲノム構造や遺伝様式がどのように進化してきたのか不明であった。そこで、本研究は二枚貝類のmtDNAの多様性と分子進化過程を明らかにするために、二枚貝の様々な高次分類群を材料についてゲノム構造および遺伝様式を研究した。
遺伝様式については、二枚貝類の中で最も大きな分類群である異歯類を中心に検討したところ、雌雄に特異的なmtDNAがムラサキイガイやイシガイ類だけでなく異歯類の様々な科にも存在し、それらが両性遺伝していることを確認した。分子系統解析の結果、雄特異的なmtDNAは二枚貝類の中で何回も独立に進化しており、その安定性は分類群によって異なることが分かった。
MtDNAのゲノム構造については、原鰓類、翼形類、異歯類、古異歯類、異靱帯類について検討したところ、それらの遺伝子配置は既知のムラサキイガイと全く異なるだけでなく、それぞれが独特な配置を示すなどきわめて多様に変化していることが分かった。また、遺伝子組成も二枚貝類の中で変化していた。ミトコンドリアのゲノム構造は高等な二枚貝類で多様性が高く、分類群間での共通性がほとんどなかったが、原始的な二枚貝類と考えられる原鰓類ではmtDNAの遺伝子配置、遺伝子組成が多板類や他の動物門と共通の原始的な特徴を残していることが分かった。したがって、二枚貝類では原鰓類に見られるゲノム構造を出発点として、個々の分類群において遺伝子配置や組成が独立にかつ多様に変化していったと考えられる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
浜口 昌己 | 農林水産省 | 水産庁瀬戸内海区水産研究所 | 主任研究員 |
浜口 昌巳 | 農林水産省 | 水産庁・瀬戸内海区水産研究所 | 主任研究官 |
|
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2001 - 2003
【配分額】14,800千円 (直接経費: 14,800千円)