タンパク質モジュールとエクソンとの対応の普遍性
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
モジュール / イントロン / エクソンかき混ぜ / イントロンの起源 / キシラナーゼ / ゲノム構造 / 分子進化 / タンパク質立体構造 / エクソン / 赤池情報理論 / エクソンのかき混ぜ / 力学的安定性 / 分子動力学
【研究成果の概要】
立体構造既知の蛋白質のすべてをモジュールに分解し、モジュール境界と遺伝子上のイントロンの位置との対応を統計的に調べ、モジュール境界とイントロンの対応がタンパク質に普遍的に成り立つ事実であることを明らかにすることが本研究の目的であった。
本研究で完成したモジュール全自動同定法を使って、立体構造が既知であって原子座標が公開されているすべてのタンパク質をモジュールに分類した。最終的に50を越える多数のタンパク質について、モジュール境界とイントロンの位置が統計的に有意に相関していることを示すことができた。この結果は、モジュールとエクソンの相関がタンパク質に普遍的に成り立つ事実であることを示している。これはイントロンが生物進化において重要な役割を担ってきたことを示す、新しい構造生物学的知見である。イントロンの起源が古いことを示しており、イントロンの起源論争に大きく寄与する重要な結果が得られた。さらに、いくつかの酵素において、イントロンを介在者として、基質特異性がモジュール交換によってもたらされた可能性が示された。本研究はモジュールとエクソンの相関がタンパク質に普遍的に成り立つこと、モジュールが機能部品であることを明らかにした。特に、細胞壁の糖分解酵素であるキシラナーゼにおいては、この酵素単独でも、モジュール境界とイントロン位置が有意に相関していることがわかった。興味深いことに、基質結合部位は数個のモジュールに局在していた。イントロンはエクソンすなわちモジュールの連結や混成を仲介したデバイスであった。モジュールを部品として生物が行ったタンパク質デザインを、生物進化的束縛を離れて、人の手で行うことが可能な事を示している。これはタンパク質工学に新たな展開をもたらす結果であり、実際に、本研究の応用としてキシラナーゼのキメラタンパク質による新機能の創出に発展させることができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
由良 敬 | 名古屋大学 | 大学院・理学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
野口 俊之 | 名古屋大学 | 大学院・理学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1996 - 1998
【配分額】7,400千円 (直接経費: 7,400千円)