新規な生分解性界面活性物質の酵素法による合成
【研究分野】合成化学
【研究キーワード】
界面活性物質 / 酵素合成 / 生分解性 / β-フルクトフラノシダーゼ / リパーゼ / 糖脂質 / 糖エステル
【研究成果の概要】
微生物または微生物酵素により合成された界面活性剤は、自然界における生分解性が高く環境負荷が少ないこと等、多くの特長を備えている。そこで、本申請研究においては、β-フルクトフラノシダーゼやリパーゼを利用して種々の糖脂質系および糖エステル系の新規な生分解性界面活性剤を合成し、構造決定を行った。
本研究において使用したβ-フルクトフラノシダーゼ(Penicillium frequen tans 起源)は申請者らが発見した微生物酵素であるが、合成反応条件を最適化するために精製し、その酵素的性質を検討した。当該酵素は、糖タンパク質であることが判明し、分子量はFPLCを用いたゲル濾過によれば298,000、電気泳動よれば96,000であった。また、精製酵素は多くの界面活性剤の存在下で安定に活性を示した。とくにTween80等の添加よって活性の上昇が認められ、これはみかけ上Km値が減少することに起因した。これらの性質は同種の酵素のものと比較して新規性が高いが、実用的にも合成反応に適した性質を有していると判断された。そこで、当該酵素を使用したスクロースからの転移反応を行ったところ、炭素数4〜10のアルコールを受容体として生分解性界面活性物質であるアルキルフルクトシドの合成に成功した。構造決定により、これらはすべてアルキルβ-モノフラクトシドであることが判明した。従来の有機合成的手法では、炭素数4のブチルフラクトシド(しかもα,β体の混合物)の合成のみが報告されているだけであり、長鎖のアルコールからも選択的にβ体みのを酵素法により合成したことは意義深い。
Rhizopus oligosporus起源のリパーゼを用いて、種々の糖(類)エステルの合成も行った。この反応では、有機化学的合成では単一生成物としての取得が困難なモノエステルを選択的に合成することに成功した。とくに、オレイン酸のスクロースモノエステルの水系合成においても、オレイン酸基準で約30%の収率が得られた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
桐村 光太郎 | 早稲田大学 | 理工学部応用化学科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1992
【配分額】1,400千円 (直接経費: 1,400千円)