均一高分子網目で紐解く動的結合と力学特性のトランススケール相関
【研究キーワード】
架橋高分子 / 力学特性 / 動的結合 / ゲル / エラストマー
【研究成果の概要】
ゲルやゴムといった材料は、高分子を架橋した三次元網目構造からなる。これらの架橋高分子材料に弱く可逆な動的結合を組み込むことで、力学的な強靭性や自己修復性などの優れた機能が実現される。しかし、動的結合の結合エネルギー等の分子レベルの特性と、架橋高分子の巨視的な力学特性を関連づける学理はいまだ確立されておらず、望みの力学機能を得るための確固たる材料設計指針が存在しない。本研究では、種々の動的結合が架橋高分子に及ぼす影響を精密に調べ、動的結合の種類によらない普遍的法則とその根底にあるメカニズムを紐解くことを目的としている。構造均一な架橋高分子をプラットフォームとしたモデル系の合成および特性評価、ならびに量子化学計算等を用いた動的結合の特性評価を行い、スケール横断的な解析を通じて目標達成を目指す。
本年度は、動的結合を組み込んだモデル系の構築に取り組んだ。まず、動的結合として構造明確な金属-配位子相互作用を選択し、配位子を導入した新規モデル高分子の合成法を検討した。制御ラジカル重合と重合後修飾反応を組み合わせ、望みの分子設計の高分子を収率よく得る方法を確立した。このモデル高分子に種々の金属イオンを添加したところ、強度の異なる架橋高分子が得られた。この架橋高分子は熱可塑性を示したことから、動的結合による架橋の存在が示唆された。金属種の種類や添加量によって、可逆性が変化す予備的知見も得られた。次に、動的結合を組み込む土台となる、構造均一な架橋高分子の合成法を検討した。これまで我々が用いてきたアクリレート系ポリマーだけでなく、ポリエステル系ポリマーでも構造均一な架橋高分子が得られることを見出した。以上のように、動的結合の性質を調べるのに必要な要素技術を確立することができた。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)