時空間発展する自己駆動体の構築
【研究キーワード】
非線形科学 / 非平衡系 / 自己駆動体 / 自己組織化 / パターン形成 / 非線形 / 自己駆動 / 非平衡 / リズム / パターン / 分岐 / 振動 / 膜・界面 / 時空間発展 / 振動現象
【研究成果の概要】
当該年度に実施した、非線形科学に立脚した自己駆動体の構築に関する研究成果は次のとおりである。
1.可逆的走化性の実験系の構築:これまでの無生物自己駆動体による走化性の研究報告のほとんどが、正または負の単指向走化性のみであった。ところが実際の生物では、採餌等走化性の目的を達したら、その場から立ち去ることができる可逆的走化性である。そこで本研究では、可逆的走化性を示す自己駆動体の構築を目的とした。具体的には、自己駆動体として6-メチルクマリン(6-MC)円板を使用し、塩基の化学刺激としてリン酸三ナトリウムを使用した。その結果、表面張力の高い化学刺激に対して表面張力の低い自己駆動体が正の走化性を示し、化学刺激上でトラップされる一方、塩基と6-MCとの化学反応が終わると、化学刺激上から脱出できる、可逆的走化性の構築に成功した。そして駆動力である表面張力測定、pH指示薬による時空間的pHの可視化、及び反応拡散方程式と運動方程式からなる数理モデルによる数値計算によって、可逆的走化性の機構を解明した。
2.酵素反応とカップリングした特徴的な運動様相を示す自己駆動体の構築:酵素反応系は、化学振動反応等、非線形性の高い化学反応と知られている。そこで本研究では、自己駆動体の自律性と非線形性を高めるため、酵素反応とカップリングした自己駆動体の構築を目的とする。具体的には、ウレアーゼの反応速度のpH依存性(ベル型特性)を活用した。その結果、初期pHを弱酸性にすると、尿素発生によるpH上昇が反応速度を高めるポジティブフィードバックが働き、振動運動を誘発することを明らかにした。その機構を明らかにするために、pH指示薬によるpHと運動速度の同時測定を行った。
3.界面活性剤存在下における自己駆動体の深さ依存性:反応拡散系に基づき、ドデシル硫酸ナトリウム上で運動する樟脳円板と水層の深さ依存性について解明した。
【研究代表者】