ヘリウム3-ヘリウム4薄膜における2次元フェルミ系の研究
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
量子液体 / 超低温 / フェルミ液体 / 薄膜 / 2次元系 / フェルミ流体
【研究成果の概要】
純粋^3He-^4He薄膜系と同様2次元フェルミ系として物理的に非常に興味深く,準粒子間の直接相互作用を調べるのに適した系である.我々はグラフォイル(剥離性グラファイトフィルム)を吸着基盤とした大表面積(約430m^2)の比熱セルを製作し,断熱パルス法で250μKまで,熱緩和法で110μKの超低温度まで面密度0.04Å^<-2>の^3He単原子層試料の比熱を測定することに成功した.これは液体^3He薄膜の物性を1mK以下の温度まで測定した初めての例である.その結果,準粒子有効質量が2.7m_3(m_3は^3He原子質量)であること,縮退領域特有の温度に比例する比熱の振舞いが約4mK以下で緩やかな山をもつような異常を示すことが判明した(今年7月パリで開かれる「量子液体・固体に関する国際シンポジウム」で発表予定).この異常は数年前Greywallによって指摘された異常と温度は近いものの,その形状は異なっている.2次元超流動転移の可能性も含めて現在その面密度依存性の確認を急いでいる.これに続いて^3He^4He薄膜系の比熱測定を行なう予定で,純粋^3Heの結果と比較することにより下地の超流動^4He薄膜の第3音波を媒介とした準粒子間の関接相互作用の大きさを決定できるものと考えている.
一方,この関接相互作用の大きさをより直接的に観測する目的で,^3He-^4He薄膜における第3音波測定の予備的な研究を行った.その結果,試作したガラス基盤をもつ第3音波共鳴器を用いて,膜厚110Åの純粋^4He薄膜の音速とダンピングの変化を超流動転移温度以下100mKまで測定できることを確認した.現在,さらなるQ値の向上を目指して共鳴器および検出方法の改良を行っており,上記の比熱測定と相補的に^3He単原子相膜における2次元フェルミ系の研究を伸展させてゆきたいと考えている.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
森下 将史 | 筑波大学 | 物理学系 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1995 - 1996
【配分額】2,500千円 (直接経費: 2,500千円)