超微細構造半導体上磁性ドットの量子干渉複合界面効果の研究
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
ナノ粒子 / 複合化 / 半導体 / 強磁性金属 / GaAs / Ni / Au / Pt / ナノ磁性体 / 複合界面 / 表面 / スピン相関 / スピン偏極 / Pd / 質量分析装置 / 巨大磁気モーメント / Ni合金 / 微粒子の久保効果 / ナノ合金
【研究成果の概要】
この研究の過程で見いだした重要な結果はPt,Pd,Auなど化学的に安定でバルクでは磁性と無縁と思われる貴金属でも、ナノ微粒子になると強磁性になることをみいだした点である。とくにPdやAuは原子の状態でも非磁性であるがナノサイズの粒子状態だけで磁性が出現する。つまり微粒子状態でだけで成り立つ独特の磁性出現機構のあることを世界で初めて明らかにした。またPt原子でも、(当然微粒子状態でも)磁性を帯びている。しかしバルクではそれが消えていく。このスピン偏極は3ナノ前後でほとんどなくなることを示した。これらのナノ粒子独特の強磁性出現機構はどのようなことからくるかに関連して、ナノ粒子の特徴である表面原子によるのではないかという仮説が理論家により提案されている。これは2次元電子系に強磁性や反強磁性の出現し得るという結果があるためであるが、ナノ粒子表面がそれと同じと考えることは疑問がのこっていた。我々はこのことを実験的に明らかにするため、Pdナノ粒子の表面にモノレーヤーを製膜するという、我々の開発した複合化技術を利用してこれを調べた。測定は、表面磁性のESR信号の特徴をあらかじめ調べた上、微粒子の表面磁性のESRモードの特徴を決め、表面モードと内部モードESRの相対強度から内部と表面で原子1個あたりどのくらいの磁気を生じているかを調べた。その結果Pd,AuやPtでは表面原子と内部でほぼ同じくらいの磁性を生じていることが実験的に明らかにされた。このことは貴金属の磁性出現機構に於いて表面の2次元性が重要ではなく、ナノ粒子自体として磁気偏極を生じるメカニズムを持つことを意味する。この結果は同時にナノ粒子自体が他にはない電子状態を作り出している事を意味し、その性質がバルクとも原子ともことなる点は応用上も注目すべき結果である。
以上はナノ粒子の表面と内部の複合効果であるが、これらを含めたナノ粒子の特異な性質を電気伝導に反映させる実験として微細加工電極間に粒径がそろったナノ微粒子を作りその磁気的性質を電気伝導を通して制御する実験も行った。この際粒径をそろえる方法として質量分析型蒸着装置のイオン源装置を導入し微粒子を微細加工電極間に作り込んだ。しかし現在の所、直径が10ナノを切ると互いに微粒子が融合して膜状になりはっきりした結果は得られていないのが現状である。しかしそれでも膜化した試料を利用して厚み変化を調べ、GaAs基板を経由した反強磁性相互作用がNiスピン間に働き金属Niの強磁性を弱めること、それがGaAs基板の伝導バンドと直接関係する事が確認され電気伝導による磁性の制御の可能性を示唆する知見が得られた。現在微粒子の融合を妨げる方法を開発しているがそれの完成により、微粒子効果を電気伝導に反映させる事が出来るものと期待される。
【研究代表者】