ヨウ素造影剤のための陽子線励起ランタン特性X線源の試作
【研究分野】医用システム
【研究キーワード】
特性X線 / 陽子ビーム / 静電加速器 / K吸収端 / 造影剤 / イメージングプレート / コントラスト / 単色X線 / 陽子線励起X線放出 / X線ラジオグラフィー
【研究成果の概要】
医療用X線撮影において,造影剤元素の吸収端よりややエネルギーの高い単色X線を利用すると,吸収が選択的に強調されコントラストの非常に高い画像が得られる.シンクロトロン放射光を用いれば強い単色X線が得られるが,装置が大型であるため一般の病院等では利用が困難である.一方,小型加速器から得られるMeV陽子ビームを単体標的に照射すると,電子ビームの場合に比べて制動放射がはるかに少ないため,特性X線を主とした準単色のX線が得られる.しかも標的元素を変えればX線エネルギーは可変である.この準単色X線による新しいイメージング技術の実現可能性を調べるため,以下の実験を行った.まず予備実験により,予定していたヨウ素I造影剤とランタンLa標的の組み合わせは,必要な陽子ビームエネルギーが高過ぎることが分かった.そこで,代わりにルテニウムRu造影剤を用いた.Pd,Ag,Cd及びInの各種金属標的を3MeV陽子で衝撃してX線を測定したところ,標的の種類を変えることでRuのK吸収端近傍でX線のエネルギーをきめ細かく調整できることが分かった.アクリル製の試験用ファントムを製作し,血管を模擬した細管内にRu水溶液を封入した.人工的なバックグラウンドとして空気及び水の細管も用意した.このファントムをこれらの準単色X線で照射し,透過画像をイメージングプレートで撮影した.Cd標的の場合,RuのK吸収端直後のエネルギーであるためRuによる吸収が強く,コントラストの強い画像が得られた.しかしファントム内の空気と水がバックグラウンドとして観測された.一方Pd標的を用いるとコントラストは大幅に低下した.これらの画像の差分を取ると,Ru溶液のみが強調されバックグラウンドをほぼ完全に消去することに成功した.これらの結果より,本研究のイメージング手法は,造影剤を用いた高コントラスト透視撮影に原理的に有効であることが分った.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
長谷川 純 | 東京工業大学 | 原子炉工学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
小川 雅生 | 東京工業大学 | 原子炉工学研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】3,200千円 (直接経費: 3,200千円)