高精度地球化学分析と数理手法で読み解く温室地球とレアアース資源生成の因果律
【研究キーワード】
レアアース泥 / 地球システム / 同位体分析 / 多変量解析 / 物質循環
【研究成果の概要】
本研究の目的は,新生代初期の温室地球における高品位レアアース泥の成因を解明することである.そのために,温室地球で生じた海底堆積物の広域地球化学データセットの構築,多変量統計解析と同位体分析による環境・物質循環変動の痕跡の抽出,および上記項目の成果を制約条件とした海洋元素マスバランス計算によるレアアース泥生成過程の定量的検討を行う.2020年度は,北太平洋ODP Site 1215コア試料のオスミウム同位体分析およびインド洋ODP Site 738コア試料のバリウム同位体分析を実施した.その結果,Site 1215では,約5600万~5200万年前の非常に温暖な気候条件下における大陸の化学風化強度の変化を示唆するデータが得られた.また,Site 738については,約5600万年前の急激な温暖期における全岩炭酸塩試料の予察的なバリウム同位体分析を行い,大西洋における先行研究と矛盾のないデータが得られた.また,海洋におけるレアアース (ネオジム) の予察的なマスバランス計算を行い,特に高品位なレアアース泥が生成するための条件を理論的に検討した.その結果,新生代における大陸の風化強度の変動を考慮すると,総レアアース濃度5000 ppm以上の超高濃度レアアース泥が生成するには堆積速度が0.4 m/Myr以下となる必要があると示唆された.この理論計算については,今後本研究で得られる分析データを基にアップデートを行う予定である.また,北西太平洋のレアアース泥から分離した微細なマンガン酸化物 (マイクロマンガンノジュール) の分析・解析結果から,レアアース泥に含まれるコバルトやニッケルといった副産物レアメタルの資源ポテンシャルや,過去の海洋循環変動と元素濃集の関連性についての議論も行い,2本の査読付論文として成果公表を行った.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
大田 隼一郎 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 助教 | (Kakenデータベース) |
宮崎 隆 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 | 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター) | 主任研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)