南アジアにおける国民統合と政治・経済システムの形成
【研究分野】東洋史
【研究キーワード】
南アジア / インド / 国民統合 / 計画経済 / 分離独立 / パキスタン / スリランカ / ビルマ / ムスリム / 不可触民 / 後進諸階級 / 公衆衛生 / 商工会議所 / 非植民地化 / ガンディー / パンジャーブ / 民族主義 / 国民国家 / 経済計画 / 経済自由化 / 英連邦史 / アメリカ合衆国
【研究成果の概要】
本研究プロジェクトは、南アジア諸国が現在大転換期にあり、国民国家形成期に創り出された制度や価値観が厳しく問い直されている現状を踏まえて、南アジアの政治・経済システムの形成過程を再検討することを目的として、1997年から3年間、現地調査(インド、パキスタン、スリランカ、英国、シンガポール)、国内研究会、国際ワークショップ、国外からの研究者の招聘等の多彩なかたちを通じて、共同研究を続けた。経済関係では、計画経済システムの形成について実証的な調査が進み、また政治関係では、「その他後進諸階級」の運動に関する資料、さらに分離独立期のインド・ビルマ国境地帯の状況についての資料の分析等に基づいて、「下」あるいは「辺境」の視点から、国民国家の形成がはらむ問題点を批判的に検討する作業が進むなど、これまで手薄だった分野の研究で成果を挙げた。共同研究を通じてもっとも重要な論点として浮かび上がって来たのは、南アジアにおける独立運動期から国民国家形成期への移行の問題である。両者を統一的な観点から把握すること、またそのような観点から得られた知見を現代南アジアが抱える諸問題の理解に結びつけること、これらの2点については、解明の努力が続けられたがいまだ不十分であると言わざるをえない。移行の問題は、今後の重要な研究課題として残されている。
本研究プロジェクトでは、11月6・7日の2日間、国外のの研究分担者を招聘して国際ワークショップを開催し、共同研究の総まとめをおこなった。このワークショップに提出されたペーパーは再編集のうえ、ニューデリーの出版社から英文論文集として刊行する予定である。(出版社は内定している。)3年間の共同研究の結果を英文論文集として出版し、国際的な評価を問う見通しをつけたことも、本プロジェクトの大きな成果と考える。
【研究代表者】