21世紀前半から後半にかけての日本の感染症媒介蚊の個体数と活性期間の変化
【研究キーワード】
地球温暖化 / 感染症 / 感染症媒介生物 / 個体群動態 / 個体群動態モデル / 降水量影響評価 / 生態系影響評価 / 降水影響評価 / 気候変化
【研究成果の概要】
新型コロナウイルス蔓延等の影響により、2021年度は2020年度に引き続き、遅れている研究発表を進めることに主眼をおき、研究活動を展開した。主として、本課題の最終成果が国際学術雑誌に掲載されるよう、執筆、修正に努め、掲載の手前まで来ている。新型コロナウイルスに翻弄された時期に展開された研究課題であるものの、当初予定のヒトスジシマカの個体群動態モデルが完成し、達成目標としていた将来気候下での動態も予測することができた。研究課題名とした「個体数と活性期間の変化」を定量的に示すこともできた。
現在気候下での個体群動態の再現ならびに将来予測を行うため、降雨がヒトスジシマカの個体群維持に及ぼす影響を組み込んだ気候データ駆動型の個体群動態モデルを修正した。キャリブレーションには東京で観測された温帯性蚊の個体数データを用い、実験等でも不明な蚊の休眠機構を数量的表現するため、尤度を指標としてモデル内のパラメータ推定を行っていることに特徴がある。温帯域の日本を代表する蚊にはアカイエカとヒトスジシマカがおり、前回の課題と併せて両種の季節的な個体群動態を再現することが可能となった。温帯性の蚊に特化した個体群動態モデルの骨子が形成されたことにより、将来気候下の動態予測にも役立つことも示すこともできた。とくに、気候値を入力することで動く時間発展型のモデルであるため、気候変化の影響を見極める際に活用しやすいという利点がある。
一方で、降水量の変化が蚊の環境収容力に影響を与えると仮定した場合とそうでない場合で、前者は後者に比べてピーク時の個体数が1.35倍に達することがわかった。このことは蚊の個体数の将来予測をする際に、降水パターンの変化を重視する必要性が高いことを示唆している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
福井 眞 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 | 水産資源研究所(横浜) | 主任研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)