新型コロナウイルス感染症治療薬を目指した新規フラーレン誘導体の創製
【研究キーワード】
フラーレン / SARS-CoV-2 / COVID-19
【研究成果の概要】
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染により引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬を目指し、世界中で様々な研究が行われている。その創薬標的は様々あるが、中でもメインプロテアーゼは最も期待されるターゲットであり、実際に、2022年2月メインプロテアーゼ阻害剤パキロビッドが日本でも承認されている。
一方、炭素同素体であるフラーレン(C60)は60個の炭素原子から構成される直径約1 nmのサッカーボール型をした炭素クラスターである。創薬化学の観点からは、空間的に広がりを持つ脂溶性スペースの確保や3次元的に固定された置換基の配置を可能にするという点で有機物質としては唯一無二の骨格であり、これを母核とした画期的な医薬品の創製を目指した研究が行われている。申請者らはこれまでに高脂溶性のC60に様々な置換基を導入することで100種類を超える水溶性誘導体を合成し、導入する置換基によって異なる生理活性を示すことを明らかにしてきた 。特に、複数のウイルスに対し抗ウイルス効果を示すことから、SARS-CoV-2の生活環に重要な酵素に対しても効果を示すことが期待された。
そこでまず、これまで申請者らが合成してきたC60誘導体がSARS-CoV-2メインプロテアーゼを阻害するかどうかを包括的に調べた。メインプロテアーゼおよび被験化合物を含む反応液に、酵素に認識、切断される12残基の基質ペプチドを加え、プロテアーゼ反応を行った。反応終了後、生成したペプチド断片をLC-MSで定量することでメインプロテアーゼに対する阻害活性を評価した。その結果、プロリン型誘導体やカチオン型誘導体など様々な誘導体がメインプロテアーゼを阻害することが明らかになり、中でもビスマロン酸型誘導体が強力な阻害能を有することを見出した。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2024-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)