雌性生殖器官における成体幹細胞システムの解明と再生医学への応用
【研究分野】産婦人科学
【研究キーワード】
子宮内膜 / 子宮平滑筋 / 幹細胞 / 分化 / 再生医学 / 子宮筋 / 免疫不全マウス / DNAマイクロアレイ
【研究成果の概要】
本研究では、雌性生殖器官が有する様々な機能メカニズムを明らかにするために、その成体幹細胞の同定・分離・培養技術の確立を通じて、幹細胞システムの解明と再生医学への応用を目的とした。
1.雌性生殖器官における組織幹細胞の分離・同定および幹細胞特性の解明
a)子宮内膜の組織幹細胞
内膜はその高い再生能力から組織幹細胞の存在が強く示唆される。近年、組織幹細胞をside population細胞として分離する方法が開発された。月経周期を通して内膜にはSP(endometrial SP ; ESP)が存在し、免疫不全マウスへの移植実験では、ESP移植部位に腺管構造を有する内膜様組織が再構築され、加えて内膜組織の各コンポーネントより成る様々な組織も構築された。
b)子宮筋の組織幹細胞
子宮筋は妊娠・分娩時に著明な増大と細胞数の増加を示し、産褥期には急激にアポトーシスを起こす。そこで子宮平滑筋における組織幹細胞の同定と単離を目的として、ESP単離と同様の戦略に基づいて、ヒト正常子宮筋層から子宮筋SP(myometrial SP : MSP)を分離した。MSPは細胞周期上quiescentであり、in vitroで骨・脂肪細胞へ分化するとともに、in vivoでは平滑筋様の組織を構築した。
さらに、GeneChip解析によりESPやMSPの発現遺伝子群のなかにABCG2といった幹細胞マーカーが含まれていた。以上より、ESPやMSPが幹細胞的特性を有し、これらを中心とする幹細胞システムが雌性生殖器官に存在する可能性が示された。
2.内膜分化制御
分子標的という観点からヒストンアセチル化およびチロシンリン酸化経路を修飾する低分子化合物を用いたところ、短期間でかつ効率よく子宮内膜の分化を誘導し得た。内膜幹細胞の分化あるいは他の細胞系譜への細胞転換を行う上での基盤データが得られた。
【研究代表者】