分子シャペロンを利用した大腸菌の有機溶媒耐性能の獲得
【研究分野】生物機能・バイオプロセス
【研究キーワード】
有機溶媒耐性 / 微生物 / プレフォルディン / 分子シャペロン
【研究成果の概要】
微生物の有機溶媒耐性機構は、微生物を利用した水-有機溶媒二相系における有用物質生産への産業利用の点から注目されている。本研究では、分子シャペロンに着目し有機溶媒耐性株の作製とそのキャラクタリゼーションを行った。
(1)超好熱性古細菌由来プレフォルディン導入による有機溶媒耐性の向上
極限環境で生育する古細菌のタンパク質は熱安定性が高いばかりでなく有機溶媒に対する耐性が高いことが示唆されている。超好熱性古細菌Pyrococcus horikoshii OT3由来プレフォルディンを大腸菌で発現させた結果、有機溶媒耐性が向上することが示された。プレフォルディン導入株は、オクタン、ヘキサン混合溶媒で増殖でき、細胞内の溶媒取込量は、コントロール株に比べ低く抑えられた。古細菌プレフォルディンは、2種類のサブユニットからなるα_2β_4の構成でクラゲ様の構造をとるが、シャペロン機能が低下したN末およびC末の残基欠損体においては有機溶媒耐性の向上がみられなくなった。これより、プレフォルディンのシャペロン活性により有機溶媒耐性が上昇することが示された。
(2)大腸菌変異株作製による有機溶媒耐性の向上
有機溶媒添加後の大腸菌のDNAマイクロアレイ解析により高発現が確認されたmanXYZを大腸菌JA300株に導入した結果、有機溶媒耐性が向上してシクロヘキサン:ヘキサン混合溶媒を10%添加した培地でも増殖した。本株は細胞膜疎水性が向上しており、疎水性基質を利用した有用物質生産において有効な生産株となることが示唆された。代謝制御因子に着目した解析においてはCRP欠損株において有機溶媒耐性が上昇することが示された。CRP欠損株においては、有機溶媒添加後の遺伝子発現解析においてシャペロン関連遺伝子が野生株と比較して高発現しており、分子シャペロンの発現挙動が有機溶媒耐性に関与していることが示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
本多 裕之 | 名古屋大学 | 大学院工学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
井藤 彰 | 名古屋大学 | 大学院工学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)