遺伝子導入フィーダー細胞を用いた外分泌腺幹細胞培養法の確立および治療への応用
【研究分野】形態系基礎歯科学
【研究キーワード】
唾液腺 / 再生医療 / 口腔乾燥症 / SP細胞
【研究成果の概要】
本研究では口腔乾燥症治療に対する新規治療法として組織幹細胞を用いた再生医療を応用する目的で、マウス唾液腺から組織幹細胞に富んだ分画として知られるside population cell(SP細胞)を採取し、その腺組織形成能および唾液分泌障害に対する治療効果について検討した。また、その発現遺伝子をcDNA microarrayを用いて網羅的に解析した。すなわち、GFPを恒常的に発現するトランスジェニックマウスから唾液腺組織を摘出し、酵素処理により細胞を分散化した後、蛍光色素であるHoechst33342で染色した。さらに、FACSを用いてHoechst33342陰性のSP細胞と陽性のMP細胞を採取した。採取した細胞を、放射線照射により唾液分泌障害を誘導したマウスの当該腺組織に移入した。移入後4週、8週に唾液量を測定した結果、SP細胞を移入したマウスではnon-SP細胞およびPBSを移入したマウスに比較して有意に唾液量の回復が認められた。しかしながら、移入組織におけるGFP陽性細胞は、少数かつ散在性に認められるのみで、SP細胞により腺組織形成は認められなかった。したがって、唾液量の回復機構としてSP細胞から分泌される液性因子を介した腺組織障害の抑制の可能性が考えられた。一方、cDNA microarrayを用いた解析ではSP細胞特異的に発現する因子の一つとして、分泌型の糖タンパクであるクラステリン蛋白が同定され、本因子を恒常的に発現するマウス線維芽細胞株(STOClu)を樹立し、その機能の詳細について検討した。その結果STOClu細胞では酸化ストレスに対する抵抗性が増大し、クラステリンに酸化ストレス障害抑制機能が認められた。これらの結果から、SP細胞の移入あるいは、その分泌蛋白であるクラステリンの応用は、唾液分泌障害に対する新規治療法となる可能性が示唆された。
【研究代表者】