直腸肛門奇形術後症例における失禁原因の解明及びその対策
【研究分野】放射線科学
【研究キーワード】
肛門 / 括約筋機能 / 鎖肛 / MRI / 画像診断
【研究成果の概要】
鎖肛術症例の失禁に対する恥骨直腸筋、外肛門括約筋、大殿筋の役割として平成5年度の研究結果を考察し、以下の結論が得られた。1.恥骨直腸筋は正常人が通常の便意をこらている状態ではForward angulationへの関与だけでなく直腸を左右方向から収縮させていた。鎖肛術後症例でClinical scoreが良好な者でも直腸は円形にではなく、左右方向に狭い防錘形に収縮していた。この形は恥骨直腸筋群にそった形態変化であり、恥骨直腸筋自体の収縮力の重要性を示すものであった。従って鎖肛術後症例でClinical scoreが良好であるためには引き抜きかれた腸管が肛門拳筋群の中を通り、かつ恥骨直腸筋に収縮力が有ることが必須の条件といえた。また恥骨直腸筋群の失禁にたいする作用はForward angulationをつくることより直腸を収縮させることに重要性がある事も判明した。2.外肛門活約筋の鎖肛術後症例における失禁に対する役割は、負荷前後の肛門管径の変化とClinical scoreとの間に明らかな相関は見出せなかったこと、肛門管下部横断像及び肛門管矢状断像で外肛門括約筋の特異的変化を指摘しえなかったことから、少ないものと考えられた。3.大臀筋の役割については、その収縮は術後排便機能良好群では顕著で、不良群ではそれを認めなかったことから、恥骨直腸筋、外肛門活約筋だけでは便を保持できない場合に失禁を防止する役割を担っている事が示唆された。鎖肛術後症例における大臀筋の役割は今まで重要視されてこなかったが、大臀筋を収縮させることで鎖肛術後患者では失禁を回避しうる一因となっている事が判明したわけで、この知見をもとに排便機能不良群にバイオフィードバックトレーニッグで学習させたところ、1例において失禁の改善を認めた。
【研究代表者】