有害物質代謝酵素の遺伝子多型と生体影響および生物学的モニタリング
【研究分野】衛生学
【研究キーワード】
分子疫学 / 遺伝子多型 / 有機溶剤 / 代謝 / 健康影響
【研究成果の概要】
有害化学物質の代謝に関与するチトクロームPA4502(以下、CYP2E1)遺伝子では発現量をコントロールしているプロモーター領域に多型性があり、1/1型、1/2型の順に発現量が高い。本研究では、有機溶剤の一種で、CYP2E1で代謝され、肝毒性、経皮吸収性があるジメチルホルムアミド(以下、DMF)について遺伝子多型と代謝や生体影響の関連について検討した。
代謝との関係 ボランティア11名を安全な範囲内の温度でDMFの曝露させ、生物学的曝露指標である尿中モノメチルホルムアミド(以下、NMF)の生物学的半減期について検討した。NMFの生物学的半減期は、特に経皮曝露で1/1型4.7±1.4時間(n=7)、1/2型3.9±0.5時間(n=3)、2/2型3.1時間(n=1)と、1/1型、1/2型、2/2型の順に短くなる傾向が窺えたが例数が少なく比較が困難であった。そこで新たに2名の1/2型ボランティアの曝露実験を行い、合計13名で解析中である。
またCYP2E1で代謝されるジメチルホルムアミドのボランティア曝露実験のデータをもっているので、ボランティアの遺伝子型を調べたが、全員1/1型であり、多型と代謝の関連は検討できなかった。
生体影響の関連 DMF取り扱い事業場で健康影響調査を行った。何らかのDMFによる健康影響が存在するのか。健康影響が存在するとすれば、遺伝子多型によって健康影響の出現の仕方が異なるかを検討した。肝臓や神経系を中心に健康診断を調査した。自覚症状や血液生化学的検査などの多角的検査の幾つかの項目で曝露との関連がみられたが、交絡因子について調査したところDMFの明確な影響は見られなくなった。今回、調査を行った事業場では、DMFによる明らかな健康影響は見られず、従って遺伝子多型が生体影響の出方に修飾を加えたこともなかった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
大前 和幸 | 慶應義塾大学 | 医学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】3,200千円 (直接経費: 3,200千円)