社会構造が個人の精神・脳機能に内在化する過程の理解に基づく精神疾患脳病態の解明
【研究キーワード】
社会構造 / 精神疾患 / 脳機能
【研究成果の概要】
主観的なQOLは、精神病の超ハイリスク者や最近発症した精神病性障害患者における臨床症状の重症度と強く関連する臨床的意義のあるアウトカムである。AYA世代精神疾患患者のリクルートにより、超高リスク者と最近発症した精神病性障害患者において、臨床症状の縦断的変化がQOLと関連しているかどうかを調べた。臨床症状をPANSS尺度で、QOLをWHOの質問票で評価した。診断名、追跡期間、年齢、性別をコントロールし、重回帰分析により臨床症状とQOLの関係を検討した。その結果、超高リスク者22名と最近発症した精神病性障害者27名からデータが収集された。重回帰分析の結果、ベースライン時の不安・抑うつが強いほど、フォローアップ時のQOLが低いことが示された。さらに、不安・抑うつと思考解体の改善は、QOLの改善と関連していた。診断の違いは臨床症状とQOLの関連に影響を与えなかった。これらの知見は、精神病が重症化しQOLに影響を及ぼす前の初期段階において、不安・抑うつと思考解体の改善が重要であることを示唆している。さらに、22q11.2欠失症候群(22q11DS)患者の親(N=125)を対象に質問紙調査を実施した。重回帰分析の結果、22q11DSの19の臨床的/個人的特徴のうち、高い特性不安が親の心理的苦痛と有意に関連することが確認された(β=0.265,p=0.018)。さらに、この特性は、医療・福祉・教育サービスや親子関係で直面する様々な困難と関連していた。22q11DS患者の不安レベルが高いという特徴が、医療・福祉・教育サービスにおいて介護者が感じる困難とどのように関連しているかを定量的に明らかにした。これらの結果は、高い特性不安が本症候群の重要な臨床的特徴であることを考慮した社会サービス構造の設計の必要性を示唆している。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)