がん転移機構の分子シグナルから個体レベルまでの包括的解析
【研究キーワード】
浸潤・転移 / シグナル伝達 / 分子イメージング / がん微小環境 / 実験動物モデル
【研究成果の概要】
(柱1)TGF-βおよびEMTのがん転移における役割
Smad4の異常は膵臓がん症例の半数で見られる。我々はヒト膵臓がん細胞株についてSmad4の発現を確認し、R-Smadのリン酸化、non-Smadシグナルの活性化、Smad4ノックアウト細胞の作製を開始した。Smad4の発現低下株では、non-Smad経路のうち、Rasの下流であるMAPKシグナルの活性が変化することを示した。
乳がん細胞では、TGF-β刺激によりEMTが可逆的から安定化した形質へと変化する。我々はChIP-seqにより、可逆的EMTから安定化EMTへと変化する過程で、ヒストン修飾パターンが変化することを明らかにした。一方、我々はTGF-βの新たな作用としてtriple negative乳がん細胞 (TNBC)に対する抗pyroptosis作用を見出した。RIG-1 like receptor (RLR)を活性化する二本鎖RNAアナログpolyI:CをTNBC細胞に導入するとRLR依存性にTGF-β-Smad3シグナルが抑制され、がん細胞死が促進した。さらに動物実験においてもpolyI:C導入の効果を確認した。
(柱2)透明化技術を応用したがん転移の分子機構
Fucciレポーターシステムでは細胞周期のG1期とS/G2/M期にある細胞を可視化することができる。我々は組織透明化技術にFucciレポーターシステムを応用することで、in vivoにおけるがん細胞の細胞周期パターンを調べた。腫瘍コロニーのFucciレポーターの蛍光パターンは様々な臓器で多様であったが、肺や骨転移巣などでは中心部にG1期の細胞が、周辺部ではS/G2/M期の細胞が特徴的に見られる傾向を示した。抗がん剤の効果を検討したところ、5-FU処理ではG2 /M停止が誘導され、特徴的な蛍光パターンを示すことを見出した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
宮澤 恵二 | 山梨大学 | 大学院総合研究部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
KA 井上 | 東京医科歯科大学 | 大学院医歯学総合研究科 | 助教 | (Kakenデータベース) |
赤木 蓉子 (勝野蓉子) | 東京大学 | 大学院医学系研究科(医学部) | 客員研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】45,240千円 (直接経費: 34,800千円、間接経費: 10,440千円)