自然免疫機構を標的とした新規放射線性消化管症候群の治療法の開発
【研究分野】放射線科学
【研究キーワード】
放射線誘導性腸線維症 / 好酸球 / 抗体療法 / 電離放射線 / 粘膜傷害 / 粘膜ワクチン / IgA / 腸内細菌 / 放射線 / 粘膜障害 / 線維化 / 自然免疫 / 放射線腸炎
【研究成果の概要】
放射線誘導性腸線維症(RIF)は、腹部放射線療法後の深刻な合併症です。 腹部照射は、好酸球の過剰な蓄積を伴う腸管線維症を誘発した。 好酸球除去は、この線維症を改善した。 照射は細胞外ATPを上昇させ、粘膜下の筋線維芽細胞にCCL11およびGM-CSFの発現を誘導した。 GM-CSFで活性化した好酸球由来のTGF-β1は、筋線維芽細胞によるコラーゲン発現を促進した。新しく開発されたIL-5受容体α抗体による治療は、腸の好酸球を枯渇させ、放射線誘発性の粘膜下線維症を効果的に抑制した。 以上のことから、我々は好酸球をRIFの病因であることをつきとめ、好酸球を標的とするRIFの新しい治療戦略を示した。
【研究の社会的意義】
消化管は放射線に対する感受性が非常に高く、癌の放射線治療において高線量の放射線に被曝すると、急性期から晩期に渡って多彩な障害が引き起こされ、効果的な予防・治療法の確立が強く求められている。特に、晩期の腸管の線維化は患者のQOLを著しく低下させるが、治療法がなかった。今回、好酸球による病態形成を明らかにし、好酸球除去抗体が有効な治療法となることをマウスで示したことは非常に大きな成果である。この抗体の人アナログは既に重症気管支喘息で、実用化されている。今後、RIFの新しい治療法が確立するのもそう遠くないと考える。学術的だけでなく、社会的にも重要な成果を得ることができた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2017-04-01 - 2020-03-31
【配分額】16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)