脳血管壁Neurotransmetlerの定量的解析
【研究分野】神経内科学
【研究キーワード】
神経伝達物質 / 脳血管の自律神経支配 / 頸部交感神経節 / フサリン酸 / VIP / 脳循環 / 血管壁自律神経終末 / 酵素抗体法
【研究成果の概要】
脳血管壁に自律神経線維が豊富に分布していることはすでに明らかにされている。しかし、それら自律神経の形態的変化と脳循環調節にはたす役割の関連はほとんど知られていない。本研究では、脳血管壁に分布する自律神経終末を電子顕微鏡的に観察し、自律神経遮断剤使用時、あるいは頸部交感神経節刺激時における脳血管の拡張・収縮反応に対応する変化を検討することにより、脳血管壁自律神経の機能と形態的変化の関係を明らかにした。さらに、酵素抗体法を用いて脳血管におけるvascative intestinal polypoptide(VIP)含有神経終末を光顕および電顕的にとらえることに成功し、その分布を定量的に検討した。その結果、fusaric auidによるノルアドレナリンの生成酵素Dopamine-β-hydroxylase阻害後、中大脳動脈(MCA)、椎骨動脈ともに、5-hydroxydipamineにより電子密度が増強されるdensecoved vesicleの最大径は60.84nm、63.07nmとコントロール群の82.77nm、79.94nmに比し有意に小であった。それらの分布はコントロール群の正規分布とは異なり40〜50nm、80〜90nmと100〜110nmにピークを有する多峰性の分布を示した。上頸神経節電気刺激時のMCA自律神経終末の観察でも、dense cored vesicleは径の小なるものの比率が大きくなると共に最大径の分布も変化し、2峰性となることが明らかとなった。このことからdensecored vesicleが必ずしも単一のpopuletzonより成るものではない可能性が示唆された。また、中膜筋層外縁からVIP陽性終末までの距離は、MCA、脳底動脈のいずれにおいても我々がすでに求めたdense coredおよびclear vesicle含有の神経終末に比し有意に小であった。さらにヒストグラムでみると、1μm以下のものが多く筋層から離れるにしたがって少なくなるが筋層内にまで入り込むものはなかった。このことより、多種の神経伝達物質もしくは神経伝達修飾物質が注目される中で、VIP含有神経終末は筋層に最も近接して存在しているもののひとつであり、脳血管神経支配に重要な役割を担っている可能性が示唆された。
【研究代表者】