低分子量G蛋白質の標的蛋白質とその病態
【研究分野】病体医化学
【研究キーワード】
低分子量G蛋白質 / IQGAP / カドヘリン / カテニン / AF-6 / 細胞接着
【研究成果の概要】
低分子量G蛋白質のRasとCdc42、Racはそれぞれ細胞の増殖や細胞骨格を制御しているが、その作用機構は不明であった。我々はRasとCdc42、Racの作用機構とその病態を明らかにする目的で、これらの標的蛋白質の単離・同定を試みた。その結果、Rasの新規標的蛋白質としてAF-6を同定した。AF-6は細胞接着に関与するPDZドメインを持ち、細胞接着の制御に関与している可能性が高い。我々は上皮細胞であるMDCK細胞においてAF-6は細胞間接着部位に局在することを見出し、接着分子蛋白質であるZO-1と直接結合することを見出した。したがって、RasはAF-6を介して細胞の接着性を制御している可能性が高い。一方、Cdc42、Racの標的蛋白質としてIQGAPを同定した。IQGAPもMDCK細胞においては細胞間接着部位に濃縮されており、細胞間接着分子であるカドヘリンやカテニンと局在が一致することを見出した。IQGAP1はカドヘリン・カテニンとin vitroとin vivoの両方で結合することを見出した。さらに、IQGAP1を細胞内にoverexpressionするとカドヘリン依存性の細胞間接着をnegativeに制御することを見出した。このIQGAP1の作用は活性型Cdc42により抑制された。これにより、今まで不明であった細胞間接着の制御機構を分子レベルで解明されることが期待され、これらの結果はこれらの分子が関わると考えられている種々の病態の理解や治療法、診断法に応用されることが期待される。
以上本年度の研究計画はほぼ達成することができたと考えている。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1998
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)