自己免疫性疾患に関与する特異的B細胞破壊法の開発
【研究分野】皮膚科学
【研究キーワード】
自己免疫性疾患 / 天疱瘡 / B細胞 / 疾患特異的治療法 / 組換え毒素 / カドヘリン / デスモグレイン / 細胞接着
【研究成果の概要】
本研究の目的は、より疾患特異性の高い副作用の少ない自己免疫性疾患に対する新しい治療法の開発を目指し、患者血中を循環する自己抗体を産生するB細胞に照準を当て、正常なB細胞を破壊することなく病的なB細胞のみを破壊する選択的除去法を開発する事である。対象疾患は、表皮接着分子であるデスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体が産生される尋常性天瘡である。平成9年度は、治療法の効果判定に必要な疾患モデルをマウスを用いて作成した。天庖瘡抗原本来の立体構造を正しく反映した組換え抗原蛋白(rDsg3)をマウスに免疫し、デスモグレインに対する自己抗体の誘導を試みた。免疫後、rDsg3を抗原として用いた組換え抗原蛋白に対する抗体の産生能をELISA法にて検討したところ、免疫後3週から4週にて抗体価の上昇を認めた。平成10年度は、Dsg3の細胞外領域と毒素とのキメラ分子(組換え毒素)を作製した。自己抗体産生B細胞の膜表面にはDsg3に対するイムノグロブリン受容体が発現されており、組換え毒素はDsg3部分がリガンドとなり抗原特異的にB細胞を認識できる。毒素は、Pseudomonas Exotoxin(PE40)を用いた。発現系として、PE40は真核細胞に対して毒性を持つため、大腸菌の発現系を用いた。また、可溶性を増すために、N末にはthioredoxin(TRX)を挿入した。Dsg3は、主要エピトープを含むN末1/3の相当するEC1およびEC2の約半分の領域を含むものを使用した(Dsg3DN1)。組換え毒素は、TRX-Dsg3DN1-PE40として発現させたものを、トロンビン処理によりTRXを除き、Dsg3DN1-PE40とした。Dsg3に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞、ならびに平成9年度に作製した天庖瘡マウスの脾細胞を標的細胞として、毒素活性を検討したところ、抗原特異的に約60%の細胞を除去することに成功した。本研究の成果は、抗原特異的B細胞破壊法の実用化に向けて大きく一歩前進したことになる。
【研究代表者】