バイオフィルムを介した胆管ステント閉塞メカニズムの解明
【研究キーワード】
胆管ステント / バイオフィルム / メタゲノム / 閉塞性黄疸
【研究成果の概要】
2021年4月より新規に8例の閉塞性黄疸患者の胆管ステントを回収し、ステント内腔表面におけるバイオフィルム構造解析を実施した。各々のステントサンプルは4分割し、嫌気および好気培養・MiSeqによる16Sr rRNAアンプリコンシークエンス、顕微鏡による解析を実施した。まず、大気圧電子顕微鏡(Atmospheric Scanning Electron Microscopy [ASEM])および共焦点レーザー顕微鏡を用いて、ステント内側の表面を観察し、バイオフィルムが形成されていることを確認した。次に、ステント表面の付着物を採取し、血液寒天培地に塗布して嫌気・好気培養を実施し、シングルコロニーアイソレーションを実施した。その結果、第一にBacillus subtilis株(8例中6例)が、第二にEnterococcus spp.(8例中5例)が、第三にEscherichia coli(8例中3例)が主要な構成菌として検出された。これらの微生物の胆汁酸環境下におけるバイオフィルム形成能を評価するため、3種類の胆汁酸(コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸)の環境下でバイオフィルム形成能を観察したところ、Enterococcus faeciumはリトコール酸の存在下でバイオフィルム形成が強く促進されることがわかった。胆汁酸の種類でバイオフィルム形成が異なるという結果が得られ、実際の生体内における胆管ステントとなるべく近い環境でバイオフィルム構造解析を実施することの重要性が認識された。同時に、バイオフィルム抑制効果を持つ薬剤について探索を開始した。複数の候補物質とともに菌株を培養し、顕微鏡観察してバイオフィルム形成の度合いを評価した。その結果、候補物質の中で、薬剤Pが大腸菌・腸球菌・ブドウ球菌によるバイオフィルム形成の抑制効果をもつ可能性が示唆された。現在、残る全ての菌株におけるバイオフィルム形成能とそれらが促進される環境を調査するとともに、バイオフィルム形成抑制効果をもつ候補物質について探索を続ける予定である。
【研究代表者】