マレイシアおよびタイにおけるマメジカ類の生理生態学的調査と増殖保存に関する研究
【研究分野】基礎獣医学・基礎畜産学
【研究キーワード】
マメジカ / 反芻類 / 胎盤 / 嗅球 / 嗅覚 / p97Bcnt遺伝子 / 動物保護 / 進化 / 反芻動物 / ルーメン微生物 / 網膜節細胞 / タペータム / 怪網欠損 / 浸透圧抵抗性
【研究成果の概要】
マメジカ類は原始的な偶蹄類で反芻類の原型を留める動物と言われる。これまでの生理生態学的な調査から偶蹄目、反芻亜目に属するにもかかわらず、反芻亜目や偶蹄目で見られない特性が明らかになってきた。今年度の研究では、家畜に加え、シカ科のキョン、ニホンジカとの比較も検討した。得られた成果は以下の通りである。
1)マメジカの胎盤は、他の反芻動物で形状が叢毛性、結合様式がsynepitheliochorialであるのに対して、マメジカでは形状が散在性、結合様式がepitheliochorialで、ウマやブタの散在性-結合組織絨毛膜胎盤から、ウシ型の叢毛性-synepitheliochorial胎盤への過渡的なものであることが明かとなった。
2)マメジカの嗅球は大脳の前方に位置し、大脳の腹側に嗅球が位置する反芻動物とは異なり、ネコやウサギに似ていた。嗅覚感度の指標とした嗅細胞数/糸球体数は7,000で、ウサギの8,000に近く、形態的にも機能的にもヤギなど反芻類よりもウサギに近いことが判明した。
3)反芻類ではルーメン微生物による消化と反芻のため唾液腺の発達が悪いが、マメジカでは唾液腺が発達し、体重比あたりの唾液腺重量は今までに知られている反芻類の中で最大の値を示した。
4)反芻動物に特異的な側系遺伝子p97Bcntの構成で、マメジカではRTE-1エクソンの5'側イントロンのRTDが逆向きであり、他の反芻類ではほとんど痕跡程度であるRTDとの変異が大きく、反芻動物の進化を検討する上で興昧ある所見がえられた。
5)予備的な調査をおこなったインドネシアで、政府の許可の下、海外研究協力者によりマメジカの飼育を開始し、今後の研究利用の可能性の途を開いた。
【研究代表者】