帝国日本をめぐる鉄道経営の国際移転: 経営管理と人的資源を中心に
【研究キーワード】
日本帝国圏鉄道 / 鉄道経営の国際移転 / 人的資源形成 / 国際関係 / 国際比較 / 日本的鉄道経営システム / 経営管理 / 帝国圏鉄道 / 日本国鉄 / 南満州鉄道 / 吉敦鉄道 / 朝鮮総督府鉄道局 / 台湾総督府鉄道部 / 東西ドイツ国鉄 / 経営システム
【研究成果の概要】
本研究の目的は、帝国日本における鉄道経営システムの発展の過程を、国際比較と国際関係という2つの研究視角から考察することにある。ただ本年度は、コロナ禍によって海外調査などが制約されたこともあり、この共通のテーマを掲げつつ、基本的には参加者各自が個別に調査・研究をすすめた。その上で、年間3回、オンラインによる集中研究会を開催し、研究進捗状況の相互確認を行った。
今年度の研究成果は以下の通りである。研究代表者・中村は、帝国圏鉄道のプロトタイプとなる日本国鉄や五大私鉄の鉄道経営システムについて、主として組織と人的資源形成の面から考察した。
研究分担者・沢井はまず南満洲鉄道の借款鉄道の一つである吉敦鉄道の建設過程に関する研究をすすめ、日中間の「技術移転」の具体的様相を検討した。その上で朝鮮総督府鉄道局の工作課、鉄道工場の幹部職員・技術者、各機関区長・保線区長、鉄道従事員養成所の動向を検討した。
研究分担者・林は日本の植民地政策が英仏の自治主義や統合主義と異なり、日本人の移住を前提とする定住型統合主義であったことに着目し、日本帝国圏鉄道における人的資源管理の比較分析を試みた。具体的には植民地雇用構造における労働賃金、採用・昇格、教育、生産性に関する数量分析を行い、エスニック的な経済不平等という論点を提示した。
研究分担者・ばん澤は、専攻するドイツ鉄道史研究において、観察対象としてカバーする範囲をより現代(20世紀後半)まで広げる研究をおこなった。そして東西ドイツ国鉄の比較史的観察を通して、20世紀後半の異なる経済システム間の鉄道業では、継承する企業文化の一致にも関わらず、その後の経営動態に顕著な相違が出た事実を改めて整理分析することができた。
台湾在住の研究協力者・蔡は、コロナ禍の影響で資料収集が難航したが、台湾に所在する台湾総督府鉄道部の共済関係資料の収集をすすめている。
【研究代表者】