なぜプログラム細胞死はイネの生産性に重要か?-その生態的役割と制御機構
【研究キーワード】
イネ / プログラム細胞死 / 収量性 / 耐湿性
【研究成果の概要】
研究代表者は、ソルガムのD遺伝子(転写因子をコードし、茎のプログラム細胞死を誘導する)のイネホモログの機能を探究する過程で、茎から穂への貯蔵炭水化物の再移動や根の通気組織形成が、この遺伝子によって制御されていることに気づいた。これまでもプログラム細胞死が形態形成に果たす役割は多くの研究者によって明らかにされてきたが、作物の生理生態的特性の一部も、ある共通したプログラム細胞死のプロセスによって包括的に制御されている可能性がある。そこで本研究では、イネのD遺伝子によって制御されるプログラム細胞死のプロセスの詳細の解明や、収量性や耐湿性といったイネの生理生態におけるプログラム細胞死の役割の特定を目指す。
本年度においては、まず、イネに存在する複数のD遺伝子ホモログの具体的な機能を解明すべく、各器官におけるそれらの発現パターンの特定に着手した。その結果、大半のイネD遺伝子ホモログが根で高発現しており、その発現の上昇と通気組織の形成が相関していることが判明した。さらに、根の通気組織形成に影響を及ぼすことが報告されている、幾つかの植物ホルモンの合成・作用阻害剤処理が、イネD遺伝子ホモログの発現に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。また、イネD遺伝子ホモログについて、ゲノム編集によるそれらの機能欠損系統を作成し、根の表現型を精査したところ、その通気組織形成に異常が生じることが明らかとなった。これらの結果は、イネの根の通気組織形成の誘導において、D遺伝子のホモログが中心的な役割を担っている可能性を示唆している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
根本 圭介 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 教授 | (Kakenデータベース) |
橋本 将典 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2020-04-01 - 2024-03-31
【配分額】44,590千円 (直接経費: 34,300千円、間接経費: 10,290千円)